44の週刊リプレイ本紹介 1月分

twitterで連載(?)してた分を月ごとにまとめて再掲します。加筆修正はするかもですが、めんどくさいので最低限になると思います。
よく考えると週刊じゃなくて「週間」な気もしますが、今更変えるとハッシュタグがね……

ソード・ワールドRPGリプレイ集〈1〉盗賊たちの狂詩曲(ラプソディ) (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)


1回目は言わずと知れたレジェンド、スチャラカ冒険隊シリーズを選びました。TRPGリプレイのあり方だけではなく、TRPGの遊び方にまで大きな影響を与えた作品ですね。
物語の定型である世界の危機や強敵に立ち向かう話でもなく、ゲームとしてあくまで効率を優先して遊ぶ話でもなく、フォーセリアという世界の中で冒険者のちょっと背伸びしたくらいの日常と、それを楽しそうに遊ぶプレイヤーたちを描いたことで、「TRPGはこんなに楽しいんだぞ!」ということをTRPGに初めて触れた人にも伝えられる教科書的な作品だと思います。
さすがに今読むと古臭い感は否めませんが(初版平成元年12月)、このリプレイに影響を受けたという話を他のリプレイでも何度か目にしたように、今に繋がるTRPGリプレイ文化の源流であると言っても過言ではないかと思います。
ただ、このリプレイの影響で、ファリス神の地位(人気)が大暴落し、以降へっぽこのイリーナが現れるまでほぼ復権しなかったという点もあります。日本では、「悪・即・斬」的思想は馴染みづらかったと言う環境もあったのかもしれませんが、2巻で頭の固いファリス神官を描いてしまったことで、ファリス神官全員が頭が固く融通が効かず悪・即・斬というイメージが付いてしまい、ファリス神官自体が敬遠されてしまったような印象もあります(もちろん、違うファリス神を演出していた卓も多数あったかと思います)。今見ると、そういう神官もいるよね〜ですまされそうな事案ですが、下手にバイブル的なものになってしまった弊害の一つではあるんだと思います。
言いがかりみたいなことも書いてしまいましたが、当時の環境も含めて思いを馳せると、楽しい作品だと思います。

ダブルクロス・リプレイ 闇に降る雪―Queen of Blue (富士見DRAGON BOOK)


第2回では、F.E.A.R菊池たけし氏の作品から、「ダブルクロス・リプレイ 闇に降る雪 ―Queen of Blue―」を選びました。
富士見ドラゴンブックでは菊池氏最初の作品になるんですかね。全体ストーリーを無闇に壮大にし、TRPGのノリによる雑談などからも積極的に次の展開を採用する菊池氏ではありますが、この作品ではそれらの要素は若干抑えめになっていますね。まあそうは言っても、ラスボスは「世界の支配者」なので全世界を巻き込むストーリーにはなっていたり、繰り返される(笑)・(一同大爆笑)・強調太字もあったりと、いわゆる「きくたけ節」はこの頃にはほぼ確立されているっぽく見えます。
でも、ストーリー自体はダブルクロスとしては比較的王道な展開にはなっており、リプレイ読み初心者にもオススメし易い作品にはなっております。
そう、一部の注意点を除いては
このリプレイは、田中天氏が(おそらく)初めてリプレイにプレイヤーとして参加した作品です。「天プレイ」という造語が生まれたように、ハイテンション&暴走気味のプレイが特色ですね。このリプレイの一番特筆すべき点は、この田中天氏のプレイの様子(とそれにツッコむ矢野俊作氏)を面白おかしく書いた点にあります。このやりとり自体は面白いのですが、一般コンベンションでこの田中天氏のプレイの様子を表面だけ真似た、ただ暴走するだけの「劣化天」が現れたなんて話も聞いたりと、実際にセッションでそのままマネされると困ってしまうというのが難点ではあります。(本文にも注釈あり)
この頃は自分もTRPGをプレイしていて、ここまでではないけど似たようなプレイを実際にしている人(もちろん迷惑ではないレベルで)を見ていたので、書いてある内容にはそこまで違和感を持ちませんでしたが、こんなプレイの様子がそのまま書いてあることには驚きを感じました。
こちらでも紹介したとおり、きくたけ作品の個人的1位に挙げている作品でもあります。
それでは、よきリプレイライフを。

聖華学園退魔生徒会―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X (ジャイブTRPGシリーズ)

聖華学園退魔生徒会―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X (ジャイブTRPGシリーズ)

聖華学園退魔生徒会―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X (ジャイブTRPGシリーズ)


第3回では、朱鷺田祐介氏の作品から、「聖華学園退魔生徒会―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X」を選びました。
メガテンのリプレイは、あの複雑な悪魔合体の例示や運用例などを入れてしまうせいなのかどうしても戦闘がガチになり、それに引っ張られてシナリオもシリアス風味のものが続いていたのですが、こちらのリプレイはお気楽・ゆるゆるに展開していきます。
どのくらいゆるいかというと、1話では人間PCだったキャラクターがプレイヤーの希望により2話で悪魔PCになっているくらいのゆるゆる加減です。まあでも、この程度は親しい間柄のセッションであれば、普通にある風景かもですね。そのゆるさに拍車をかけているのは、プレイヤーの一人が著者でありGMである朱鷺田氏の「娘。」さんであるせいもあるかもしれません。あとがきにはこの娘さんがテープ起こしなどを手伝っているとあり、朱鷺田氏の「家内制手工業リプレイ」という表現がしっくりきます。
その雰囲気が良かったのかキャンペーンは長く続き、最終的には9巻(+外伝短編1話)までと、JIVEのTRPGリプレイでは(おそらく)最長の作品となっています。また、1巻では中学生だった「娘。」さんも最終巻では大学生になられており、時の流れを感じました。
一時期、リプレイは「プレイのお手本」的なものに囚われているように見えた某社や、セッションの勢いだけを重視しているような描写に見えた別の某社のリプレイが続いていた中、「聖華学園退魔生徒会」はある意味前々回に紹介した「スチャラカ冒険隊」に近い雰囲気に原点回帰した印象は受けました。まあ、出版された頃は上で述べた他社の傾向もだいぶ解消されてはいたんですけどね。
このリプレイには当時発売の新作メガテンにインスパイアされたストーリーが織り込まれており、プレイ済みの人はニヤリとできる場面が多くありそうなのも特色なのかもしれません。でも、自分はメガテン関係作品を一つもプレイしていないのでよく分からないのですが……
ガチ戦闘で唸らせるリプレイも、ゆるゆるとプレイの楽しそうな様子を描写するリプレイもそれぞれ違った魅力があると思いますね。
それでは、よきリプレイライフを。

艦隊これくしょん‐艦これ‐艦これRPGぼっちリプレイ 空はあんなに青いのに (富士見ドラゴンブック)


第4回では、河嶋陶一朗氏の作品から、「艦隊これくしょん −艦これ− 艦これRPGぼっちリプレイ 空はあんなに青いのに」を選びました。
最近導入されることも増えてきた一人プレイモードを採り上げたリプレイで、元はwebで連載されてた気がします。GM(この作品では提督)に「天空物語」の幸宮チノ氏、ルールアドバイザーに河嶋氏が入り、チノ氏の一人プレイ(机上演習)の様子を起こした作品になります。
艦これRPGはベースがサイコロフィクションなこともあって、サイコロの出目で勝手に面白くなっていくという要素があり、また、艦これという元ネタがあることにより、こじつけ・妄想が展開しやすくなるという相乗効果もあって、それらがうまく表現されています。また、チノ氏のネタ体質やヒドイ出目の悪さもあり、それらもいい所でアクセントとなって効いていますね。16pで河嶋氏が「机上演習は妄想しながら遊んだ方が絶対楽しい」と述べているのは、まさしく至言だなと思います。
ただこの作品は、リプレイとしてはかなり異質な部類に入ります。
艦これのキャラ(艦娘)の性格を理解していないと話が頭に入りにくいのもそうですが、本文の半分以上が艦娘のやりとりで構成されており、一見ただの二次創作作品に見えてしまうこと、及びその艦娘のやりとりを実際にどこまでやってたのかは当然分からないことにより、そもそも「TRPGリプレイ」のカテゴリに入れるべきではない、という人もいるかもしれません。まあ、私はあまり細かいことは気にしないのですが。
一人プレイということで、どうしても虚しい・寂しいイメージがある中、このように一人プレイを面白おかしく書いてあるリプレイにも意義があると思います。
それでは、よきリプレイライフを。

ソード・ワールドRPGリプレイ集xS 文庫 1-4巻セット (富士見ドラゴンブック)


第5回では、清松みゆき氏の作品から、「ソード・ワールドRPGリプレイ集xS1 猫の手冒険隊、集結!」を選びました。
第1回に「盗賊たちの狂詩曲」をとりあげましたが、そちらがフォーセリアを舞台とするソード・ワールドRPGリプレイ1作目なのに対し、こちらはフォーセリア舞台のソード・ワールドRPGリプレイ最終シリーズになりますね。最終シリーズなので、リウイのように世界の危機に立ち向かう…… という訳ではなく、一地域に草の根的に力を広げた悪の秘密結社を倒しに行くというスケールが大きいんだか小さいんだかよく分からない感じのメインシナリオとなります。
このリプレイできっちりしている所、というか清松氏らしい所は、いろいろなプレイヤーのミスややり過ぎに対して制裁を加えている所にありますね。追加敵がいる可能性があるにも関わらず突出したPCを容赦なく捕獲したり、盗賊ギルドで失言したPCには見張りのNPCをつけたり、そのNPCを邪険にしていたら重要参考人と一緒にドロンされたり、やりすぎたプリーストPCを街から追放したり。まあ中には微妙に機能していないものもあったりしますが、こういう例示はGMをする上でも参考になるのではないでしょうか。
あと、SWリプレイで実は初かもという要素ですが、「なんちゃってチャ・ザ」プリーストのPCがいるということですね。旧版ソード・ワールドをプレイした方はお分かりかと思うのですが、チャ・ザは1レベルで使える特殊神聖魔法がとにかく便利なんですよね。だからリプレイで使うのは意図的に避けてきたんでしょうが、今回は最後ということでその点は目をつぶったのかもしれません。
ただ、このPCは普段は他PLから「大首領」と揶揄されるほど比較的黒かったりヒドかったりする発言が多いのですが、チャ・ザプリーストとしては、意外と外れたプレイをしていないというか、むしろプリーストとして動いていたりと「なんちゃって」にも関わらずスキのないロールプレイをしたりしています。(セッシー絡みはまあ仕方のない所はありますが)
また、旧版ソード・ワールドは、命中率を上げる方法が少ないせいで、その命中を上げられるメイス系が有利だと散々言われていたのですが、このシリーズの最終戦闘で太いけど避けない敵を数多く出すことでソード系の有利さを出したのはソード・ワールドの面目躍如という所でしょうか。
このリプレイでは敵の名前は金属名でおよそ統一されてるんですが、R&R連載当初のラスボスの名前はDr.リード(lead)だったのは、ナイショです。(別に内緒という訳でもない)
それでは、よきリプレイライフを。