44の週刊リプレイ本紹介 2月分

twitterのやつをまとめました。

D&Dリプレイ 若獅子の戦賦 (HJ文庫G)

D&Dリプレイ 若獅子の戦賦 (HJ文庫G)

D&Dリプレイ 若獅子の戦賦 (HJ文庫G)


言わずもがなではありますがD&Dアメリカをはじめとして海外では超メジャーなんですけど、日本ではいろいろな事情が相まって、一時期TRPGの展開及びリプレイの展開にはかなり恵まれない環境にありました。そんな中でD&Dが2000年に3rd Editionに版上げ、日本語版が2002年にホビージャパン社より発売されたことで、日本でのD&D復権が始まりました。このリプレイは、さらにv3.5に版上げされ、日本オリジナルの背景世界「トーチポート」でのリプレイとなります。
トーチポートは背景世界として薄味なこともあってか(個人の感想です)非常にとっつきやすく、シナリオも女性成分多めながらも基本的には王道な展開であり、シナリオ面では安心して読める作品となっています。
PLとして、「中国嫁日記」の井上純一氏(当時:井上純弌)が参加していますが、他のリプレイでは正直目に余るプレイもしている氏ですが、今回のリプレイではウォーフォージド(ロボ種族のようなもの)を演じ非常に重厚なプレイをしています。別のPLとして、田中天氏も参加し「女エルフの次世代スタンダード」と称していたりもしています。「次世代スタンダード」かは別としても、長命種族の悲哀を女性エルフで演じているのは、リプレイにおいては比較的珍しいキャラ造形にはなっています。
ルール面においては、自分はAD&D2版(Dark Sun)をかなりの回数、D&D3Edを数回プレイしていたこともあって、ルール自体はそれなりに把握しているためそこまで違和感なく読めたのですが、ルールが複雑なAD&D2版を元にしさらに特技を多く追加された3版は、このリプレイだけでのルール把握は難しいかもしれません。特に、ウィザードがメインクラスではないキャラがビシバシとワンドでダメージを出しているのに対し、プレイヤーが知恵をひねり出しまくって呪文「グリース」を有効活用しようとソーサラー専業キャラが奮闘しているのは、プレイ経験のない人には想像しづらい光景なのかもしれません。
どうでもいい話としては、挿絵も担当している井上純弌氏の絵が非常に扇情的すぎるということでしょうか。これでは外では読みづらいと思う人も多いかもしれません。(モロ表現がないので自分はあまり気にしませんが)
色々書いてしまいましたが、時間跳躍しての高レベル帯でのプレイも載っており、プレイをする上での参考にもなる作品だと思います。
それでは、よきリプレイライフを。

覚悟の扉―ダブルクロス・リプレイ・アライブ (富士見ドラゴン・ブック)


第7回では、矢野俊策氏の作品から、「覚悟の扉―ダブルクロス・リプレイ・アライブ」を選びました。
現代異能モノの小説やマンガなどでは、一般人が能力者に覚醒するという展開は「お約束」と言えるくらいよく描かれていますが、TRPGでもそれを再現しているリプレイになります。これを実際にプレイに取り込んだGMやPLもたくさんいるかとは思いますが、GMは設定作成が意外とめんどくさかったり、PLはあまりに語りが長くなりすぎて他PLに迷惑かけるのもアレなので自己紹介でサラッと紹介するにとどめたり、などと実際のプレイできちんと織り込むには少しハードルが高く思える要素ではあります。
その点リプレイだと最初から書籍化を前提としている場合が多いため、多少他のPLが待たされても納得ずくですし、書籍内ではちょっと導入が長くなるくらいで済むので、リプレイには向いた展開なのかもしれませんね。
主人公である七村紫帆を演じるのは、挿絵も担当している しのとうこ氏。「オリジン」ではPC2の玉野椿を演じていました。椿は堅実でスキがあまりないキャラでしたが、今回の紫帆は主人公ということもあり、色々な弱い点も多くロールプレイされています。紫帆はどこか空虚な点を感じさせるキャラでもあったのですが、設定とGM矢野俊策氏のシナリオを上手く絡め合わせ、3巻ラストで一気に昇華した感じですね。
また、アライブは魅力的な新NPCが多く出たリプレイでもあります。その中での一番はやはりテレーズ・ブルムでしょう。
4歳にてUGN中枢評議員の天才金髪幼女、と属性てんこ盛りではありますが、UGNのトップの一人として冷徹な指示・判断を下しながらも、荒ぶる"かわたな"氏演じる千城寺薫に翻弄される実においしいキャラになりました。そのおかげか3巻では表紙になり、3rdでも公式NPCに採用と大出世。他にも、アキューズはもちろんのこと三郎、槙絵、拓真&知冬、メガナタリアなど、個性溢れるNPCには事欠きません。ただ、彼等のほとんどはもう……
このリプレイのもう一つの見どころは、GM矢野俊策氏が戦闘面で容赦ないことですね。
1話 2/3、2話 3(1)/3、3話 4/4、4話 4/4、5話 3(3)/4、6話 4(2)/4、7話 4(2)/4、8話 4(3)/4
これが何の数字かというと、バックトラックで2倍振り以上のPLの比で()内は3倍振りの数字ですが、これはさすがに多すぎでかなりのやり過ぎと言ってもいいでしょう。その分、戦闘シーンはかなりハラハラさせるシーンに仕上がっており、読み応えのある部分になっています。
それでは、よきリプレイライフを。

迷探偵登場!デュダRPGリプレイ集〈1〉 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)


第8回は、安田均氏と高井信氏の共著の作品から「デュダRPGリプレイ集1 迷探偵登場!」を選びました。
タイトルに「デュダRPG」とありますが、「デュダRPG」という名のTRPGは存在せず、旧版のソード・ワールドRPGに簡単な2つの判定を追加した、ヴァリアントルールによるリプレイ作品となります。
そもそも「デュダ」とは何なのか?
ソード・ワールド短編集「ナイトウィンドの影」に収録された、高井信氏が著した「鏡よ、鏡!」という短編小説作品が初出で、長編小説6冊、短編小説3本、そしてここで紹介するデュダRPGリプレイが展開されました。
鈍重にして頑迷、そしてわがままなドワーフのデュダが、助手のエルフのリュークとともに迷推理(誤字に非ず)で難事件を解決したり、難事件が勝手に解決したりするお話ですね。リプレイには、小説の設定を元にデュダとリュークがPCとして登場しています。まあ最終的には、他のPCも全員、逆輸入される形で小説にも登場してはいるのですが。推理よりもユーモアを重視していることもあり、技術レベルなど他のアレクラスト作品と異なるところも結構ありますが、リプレイ1巻のあとがきで清松みゆき氏がカレーとシチューに例えて説明・許容しています。
リプレイでは、高井信氏と安田均氏が交代しながらGMとデュダを演じています。こういう形式のリプレイは意外と珍しく、パッと思いつくのは複数人でGMを持ち回りしたサタスペの「アジアンパンクGO!GO!」とPCの一人が立場的に「上がり」になってしまったのでGMと交代したメガテン短編の「ナイトテイル旅情編」(湯けむり女神とアバドン王に収録)くらいでしょうか。
サタスペ リプレイ アジアンパンクGO!GO! (Role&Roll Books) (Role & Roll Books) 湯けむり女神とアバドン王 Replay:真・女神転生TRPG 魔都東京200X (integral)
他にも珍しい要素としては、シナリオ導入時にGMがいなくても勝手に話が進んでいく様を描写しています。もちろん、小説である程度キャラが固まっているのでこういうプレイをやりやすいという下地はありますが、第2回で採り上げた「闇に降る雪 ―Queen of Blue―」でも田中天氏絡みで似たような描写があり、それよりも8年も前の作品であることから、もしかするとこのような描写の草分けなのかもしれません。
リプレイとしては、今の価値観からするとNPCに対して若干やり過ぎな点もあったり、(設定上仕方ないのですが)デュダがものすごく傍若無人だったり、デュダ作品に全く触れてない人には分かりづらかったりもしますが、非常にユーモア溢れる作品となっています。
前々から言っていますが、デュダと愉快な仲間たちを上手くアレンジしてリメイクすれば、非常に面白い萌え4コマになりそうな気がしてますので、SNEさんどうかよろしくお願いします。(投げっぱなし)
それでは、よきリプレイライフを。

ガンドッグ・リプレイ マリオネット・ネメシス (Role&Roll Books)

ガンドッグ・リプレイ マリオネット・ネメシス (Role&Roll Books)

ガンドッグ・リプレイ マリオネット・ネメシス (Role&Roll Books)


第9回は、狩岡源氏の作品から「ガンドッグ・リプレイ マリオネット・ネメシス」を選びました。
ガンドッグ」はガンアクションをメインとしたTRPGで、PCは国際的再保険会社『ワイズ』の私兵『ガンドッグ』(2版の「ガンドッグゼロ」以降は民間軍事会社所属の者をさす)となり、ワイズの依頼を受け様々な任務を遂行していく立場となります。
世界設定としては、2016年の近未来ということですが、すでに追い越してしまってますねw 国家の力関係などは現在とは大きく変わらないのですが、「ナイトメア・ストーム」という地球レベルの異常気象が猛威を奮ったことにより、全世界で治安が悪化しているという設定になっています。
PCのうち主人公格は、ロシア軍で経験を積んだユーリー・A・コズロフ、47歳。41歳から能力値減少が始まるガンドッグではかなり厳しい設定ですが、その分重厚なプレイで魅せています。もう一人の主人公格はオリガ・A・シチェルバコワ。12歳の時に父がMIAとなり翌年母も亡くなったため、父の親友コズロフが後見人となった設定。他のPCは、死に場所を求めるジャック・ボーマン、暗殺者組織出身のタクミの2人です。
このリプレイは、ワイズ・ロシアに所属するPC達が任務の裏に仕掛けられた陰謀を暴いていく内容なのですが、そのストーリーがかなり秀逸な出来となっています。
鋭い方はこれだけでも気付いているかもしれませんが、KIAではなくMIAとわざわざ設定されているということは、オリガの父でありコズロフの親友であるアレクサンドル(サーシャ)・シチェルバコフとPC達は悲しい再会をすることになります。すっかり変貌してしまったサーシャに対し、コズロフとオリガがどう対峙しどのような決断を下すのかというのがメインストーリーで、その中でジャックの過去の任務中に人質となって殺されてしまった恋人シャーロット の妹セシリアとジャックのロマンスや、タクミと一緒に暗殺者組織から逃げ出したはずのディーナとの再会が描かれます。詳細はもちろん中身を読んでもらうのですが、このあたりのストーリー展開が本当に綺麗にできており、ほとんどハードボイルド小説を読んでいるような気分にさせられる作品です。
リプレイとしてみると、ルールブックを持っていないと判定部分が分かりづらかったり、初期の作品のせいか新書版の良さである下段のコラム枠が上手く活かせてなかったり、魅力1のタクミがイケメンなイラストだったり(最後は言いがかり)するのですが、全体として非常に面白い作品ではあると思います。
それでは、よきリプレイライフを。