44の週刊リプレイ本紹介 6月分
twitterのやつをまとめました。
5月がSNE特集だったので、6月はF.E.A.R.特集ということでやりました。
オレの青春が灰と隣り合わせのままダンジョンで終わるはずがない アリアンロッド2E・リプレイ・オンライン (富士見ドラゴンブック)
オレの青春が灰と隣り合わせのままダンジョンで終わるはずがない アリアンロッド2E・リプレイ・オンライン (富士見ドラゴンブック)
- 作者: 鈴吹太郎,F.E.A.R.,かんくろう
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/富士見書房
- 発売日: 2014/08/20
- メディア: 文庫
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#44の週刊リプレイ本紹介
— しじゅうし (@shijuushi) 2018年6月2日
朝にも書きましたが、6月はF.E.A.R.特集とします。
第23回は、鈴吹太郎氏の作品から、「アリアンロッド2E・リプレイ・オンライン オレの青春が灰と隣り合わせのままダンジョンで終わるはずがない」を選びました。 pic.twitter.com/FMZU6GHpRf
第23回は、鈴吹太郎氏の作品から、「アリアンロッド2E・リプレイ・オンライン オレの青春が灰と隣り合わせのままダンジョンで終わるはずがない」を選びました。
著者の鈴吹太郎氏は、F.E.A.R.及びゲーム・フィールドの代表取締役社長*1です。執筆作品はそこまで多くはないのですが、PLとしては非常に多くのリプレイに参加されています。リプレイの逸話でいちばん有名なのは「リーンの闇砦」のファラウスですね。
この作品は、オンラインゲームのキャラを通常のPCのように作成し、PLとは別にそのゲームをプレイしている人もそれぞれ存在している多重構造な設定になっています。かなり複雑な設定ですが、ハンドアウトで「ゲームをプレイしている人」≒「PL」と指示することで、プレイに関してのハードルを大きく下げています。入れ子構造なのは相当ハードル高いでしょうしね。整理すると、オンゲ内キャラをアリアンロッドのルールで動かし、PLが演じるのは「ゲームをプレイしている人」(この部分には判定要素なし)という感じになります。
PC≒PL及びオンゲ内キャラを紹介します。一応断っておきますが、PC≒PLなのは設定でありあくまで別人です。
音々ちゃん
PLは役者の卵の中島音々氏。かつては、鈴吹マユリという名で、アルシャードのリプレイに参加…… という所で気づく人もいるかと思いますが、鈴吹太郎氏の長女さんですね。キャラは斧使いの女戦士ムイ。
菊池さん
PLは副社長菊池たけし氏。尻で水道管を破壊するドロンパ(説明雑)。オンゲ自体にF.E.A.R.が関わっている設定なのでキャラはステマプレイ女アコのカガリ。
オンゲ上はイナッシー以外女性キャラということで、稲垣氏の婚活ネタを意識した形になっています。シナリオはなんとなくタイトルからも想像がつくように、オンゲ上である一つの「チート」が用意されており、それをチートと気づかず使用してしまうことで話が進んでいきます。
その「チート」とはギルドサポート《デバッグモード》。これを使用するとなんと、HPとMPの現在値が999に、所持金が999,999Gになります*2。
こんな状態では、初期シナリオ最高難度も当然のようにあっさりクリアしたところで、驚愕の事実が…… というところで、先の展開もある程度読めるかもしれませんが、詳しい内容は本編を確認していただければと。
この解決法はそのギルドサポートのギミックをうまく利用したものになっており、ちょっとのミスで難易度が格段に跳ね上がる設定で、非常に感心させられました。
さて、演じている対象もほぼほぼ自分なのに、これはTRPGリプレイなのかという疑問が出る人もいるかも知れません。実際に内容を読み進めていくとわかるのですが、PC≒PLなのは「ゲームをプレイしている人」の動機づけ部分以外はフレーバー以上のものではなく、リプレイ部分は普通のTRPGシナリオを越えるものではないので、十分にTRPGリプレイである、というのが私の見解です。
どちらかというと、TRPG内で自分をわちゃわちゃさせる例示的な意味合いとして見ると、しっくり来るかもしれませんね。
このように自分をベースにしたキャラは、私もGURPS PsyonicsでPCを作成してPLをした経験がありますが、これはこれで面白いものですよ。
それでは、よきリプレイライフを。
アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG (ファミ通文庫)
アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG (ファミ通文庫)
- 作者: 齋藤幸一+田中信二/F.E.A.R.,安達洋介、hu-ko
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2012/01/30
- メディア: 文庫
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#44の週刊リプレイ本紹介
— しじゅうし (@shijuushi) 2018年6月11日
第24回は、齋藤幸一氏の作品から、「アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG」を選びました。
この本には2つのリプレイが収録されていますが、今回は本のタイトルにもなっている「本当のRPG」の方のみ紹介させていただきます。#TRPG #リプレイ pic.twitter.com/dDhJ5EAmxh
第24回は、齋藤幸一氏の作品から、「アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG」を選びました。 この本には2つのリプレイが収録されていますが、今回は本のタイトルにもなっている「本当のRPG」の方のみ紹介させていただきます。
齋藤幸一氏は出版当時F.E.A.R.のアルバイトでした。イラクへの派遣経験がある元自衛官という異色の経歴を持ち、ナイトウィザード「蒼穹のエンゲージ」に続き、本作が2冊目のリプレイとなります。
「本当のRPG」はゲーマーズ・フィールドにて連載されていた4コマ漫画、「Quick Start!!」(以下"くいすた")とのコラボリプレイになります。はい、4コマ漫画とTRPGリプレイがコラボと聞いても、すぐにピンとくる人は少ないと思いますので、まず、"くいすた"の簡単な紹介をしたいと思います。
くいすたは、女子高生達がいろいろなTRPG*3をするTRPGあるあるネタ満載の4コマ漫画*4になります。作者は安達洋介氏。パズドラやヴァンガード等にイラストを提供しているだけではなく、第7回で紹介した「覚悟の扉」などのリプレイでPLとして参加したりもしています。くいすたのキャラ紹介を簡単にすると(学年は2巻当時)
サチ:知識の豊富な和マンチだが、サイコロの目は悪い。2年
フミ:TRPG初心者。人型に留まらないレベルの人外好き。2年
サクラコ:モモの双子の妹。オジサン好きのツッコミ役。2年
池上先輩:GMでもPLでも上級者だがネーミングセンスだけはない。大学1年
メイコ:謎の超ゲーマー兄を持つせいか知識の濃い1年生
高見先生:最年長だが大人気なく超越してるPCを遊ぶのが大好き。仕事があるので参加率低め。
この辺にしておきますが、くいすたは非常に面白いですよ(ダイマ)
- 作者: 安達洋介
- 出版社/メーカー: ゲーム・フィールド
- 発売日: 2008/12
- メディア: おもちゃ&ホビー
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今作品のPCは、くいすたのキャラがそれぞれ自分をモデルにしてキャラメイクをしたら、というコンセプトで作成されています。さらに、くいすた世界の住民であることを表す "OVL:Quick Start!!" のクラスを全員が1LV所持し、キャラに合わせた特技も一つ習得しています。
さて、今度はPCの紹介です。(くいすたクラスは省略でPL敬称略)
高見先生(鈴吹太郎):ワード×3
モモも所持している"ワード"は神の転生体を意味するクラスなんですが、これだけで先生だし仕方ないねで済まされるレベルのパワーを持つ。なお、神の名は「高見神」
という感じで、こんなヒドイ…… もとい、再現度の高い設定になっています。
シナリオの展開としては、ミッドガルドに飛ばされたモモたちですが、それぞれ紙を持っていることに気づきます。それは、GMサチが用意していたシナリオの一部であり…… ということで、セッションしていたシナリオの中に取り込まれたモモ達が奮闘する展開に…… というのは大筋では間違ってないんですが、メタ視点は必須でお祭り的リプレイなこともあって、ギャグ要素多めのお話となっています。もちろん、サチやサクラコもミッドガルド世界で登場し重要な役割を果たすのですが、残念ながら池上先輩とののみーは登場しません。
このリプレイは、くいすたのキャラ設定の下で割と好き放題やっているPCたちに対し、齋藤GMが時には戸惑いながらもうまくいなしたり、たまに乗っかったりするところがポイントですね。シナリオもメタ視点で難しい所はあるのですが、うまくまとまっていると思います。
TRPGに興味はあるけど、いきなりルルブやリプレイはハードルが高いという方は、ぜひ「Quick Start!!」から手にとって、そこからTRPGやリプレイの面白さを発見してみるのもいいかと思います。
それでは、よきリプレイライフを。
神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ 時を越えた子守歌 (GA文庫)
神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ 時を越えた子守歌 (GA文庫)
- 作者: 加納正顕,F.E.A.R.,みかきみかこ,榊一郎
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2008/08/15
- メディア: 文庫
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#44の週刊リプレイ本紹介
— しじゅうし (@shijuushi) 2018年6月17日
第25回は、加納正顕氏の作品から、「神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ」シリーズ(時を越えた子守歌、貴方と繋がるハーモニー)を選びました。 #TRPG #リプレイ pic.twitter.com/DgKGiqP3G8
第25回は、加納正顕氏の作品から、「神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ」シリーズ(時を越えた子守歌、貴方と繋がるハーモニー)を選びました。
著者の加納正顕氏は、TRPGリプレイを主に執筆しており、ダブルクロス・リプレイ・デザイアが特に有名ですね。本作は加納氏初の作品となります。兼業ライターとのことで、普段はサラリーマンをされているとどこかで目にした記憶がありますが、出典が見つけられませんでした。
システムの神曲奏界ポリフォニカRPGですが、同名の作品をTRPG化したもので、基幹システムはSRS(スタンダードRPGシステム)を使用しています。神曲奏界ポリフォニカは2005年にキネティックノベルという形式で発表された後、GA文庫でシェアードワールド的に複数のシリーズが展開されました。特に榊一郎氏著のクリムゾン・シリーズは2007年と2009年の2度に渡ってアニメ化もされています。
神曲奏界ポリフォニカの世界観は、人間と精霊とが共存する異世界で、精霊は上級・中級・下級と明確なランク分けがあります。精霊はエネルギー体であるため、よほど下級のもの以外はそのエネルギーを放出することで人間を上回る力を持っています。では人間が精霊に何もできないかというとそんなことはなくて、一部技能者に限られますが「神曲」を奏でることで、精霊に力を与えることができます。
「神曲」を奏でられる人間は「神曲楽士」と呼ばれますが、これは国家資格であり非常に狭き門を通過したものだけという設定になっています。精霊は神曲楽士と契約することで、神曲から何倍もの強い力を得ることが出来ますが、これは諸刃の剣であり、他の神曲楽士の影響を受けづらくなったり、神曲は精霊にとっては麻薬のようなものであるため、神曲楽士が急死した場合などに神曲が得られなくなることで精霊が暴走し、エネルギーを無制限に放出するなどして消滅してしまう危険性も孕んでしまいます。
設定説明が長くなったのでこの辺でやめておきまして、PCとPLを紹介します。
ネル(鈴吹太郎氏)
オウム型の中級精霊でローゼリエと契約。口うるさい性格の女性で、鳥でも運転可能にカスタマイズした車を所持。
バーセル(榊一郎氏)
温厚な性格の白熊型上級精霊。役に立たない3人*5を尻目に一手に事務所の雑用を引き受ける。年かさのため知識も豊富(中の人の有効利用)。
という感じでキャラはかなり濃いですが、そもそもクリムゾンシリーズも十分濃いキャラ達ので見劣りしない感じです。実は2巻でもう一人PCが追加されるのですが、それ自体が大きなネタバレのため、ここでは伏せます。ちなみにPLはリプレイ経験の豊富な合鴨ひろゆき氏です。
ストーリーについて、後に前述したデザイアシリーズで評判となった加納氏ですが、この時点でその片鱗が見えています。全2巻4話ということで、複雑な話は当然できないのですが、その短い中でも精霊の暴走や精霊との契約、精霊と人間との対立といったポリフォニカで描かれている世界観をうまく活かしながら、きれいにストーリーをまとめています。榊氏はリプレイ登場キャラ達が気に入ったのか、後の作品でゲスト出演したり設定を広げたりもしています。
もちろん、ポリフォニカの世界観が頭に入っていないと分かりにくい面もあるのですが、自分もこの作品で初めてポリフォニカに触れてそれなりに理解できたので、そこまで大きな問題ではないかと思われます。なお、私はこれを読んだことで、当時出版されていたポリフォニカ作品を全て購入したことを覚えています(・ω<)
私とは逆に、ポリフォニカ作品が好きな人は、是非このリプレイも手にとっていただければと思います。
それでは、よきリプレイライフを。
ダブルクロス・リプレイ・ジパング(1) 戦国ラグナロク (富士見ドラゴン・ブック)
ダブルクロス・リプレイ・ジパング(1) 戦国ラグナロク (富士見ドラゴン・ブック)
- 作者: 田中天,F.E.A.R.,獅子猿
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2008/12/20
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 16回
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#44の週刊リプレイ本紹介
— しじゅうし (@shijuushi) 2018年6月24日
第26回は、田中天氏の作品から、「ダブルクロス・リプレイ・ジパング」シリーズを選びました。 pic.twitter.com/0SG26sD9Jk
第26回は、田中天氏の作品から、「ダブルクロス・リプレイ・ジパング」シリーズを選びました。
著者の田中天氏は、何度もPLとしては紹介していますね。フリーライターではありますが、F.E.A.R.作品で非常に多く出演されています。「大惨事発生装置」などの異名もあったりしますが、年を経るにつれてやや控えめになってきている気もしますね*6。
この作品で使用するシステムはダブルクロスの2ndEditionで、2nd最後のリプレイです。ダブルクロスはいくつかの背景世界(ステージ)が提示されており、この作品では「平安京物怪録」ステージ要素を一部流用していますが、新たに「ジパング」というステージが設定され、とある時より分岐したトンデモ戦国時代を舞台としています。簡単に説明すると、退魔師や忍者、妖怪や人ならざる技を持つ一部の剣豪は全部オーヴァードだったという感じでしょうか。
ストーリーの導入は、現代で平凡な高校生として生活していたPC1と、最近同居を始めた10歳の従兄弟の勇太が、突如目の前に出現した"穴"に吸い込まれ、トンデモ戦国時代にタイムスリップしてしまった、というところから始まっています。PC達を紹介すると
天野真弓(水野暁子氏)
導入でのPC1役。面倒見の良い女子高生。年齢の割に精神的にはタフであり、タイムスリップしてもめげない性格。命中後にダイスペナルティを与える強力な「トキジクの弓」を授かり、戦闘でも活躍。PLの水野氏はGMらのゲーム仲間とのこと。
イクフサ(細野君郎氏)
本性は巨大な狼のキュマイラ大妖怪だが、敵の魔縄ドラウプニルで巨岩に封印されていた。流れで真弓に封印を解かれる、孫悟空や犬夜叉ポジションで、一番のツンデレ。細野氏は田中天氏や矢野俊策氏とは学生時代からの付き合いとのこと。
山住浄ノ進(矢野俊策氏)
物腰は柔らかだが、病弱で事あるごとに喀血しまくる退魔師。その血で従者を生み出すブラム=ストーカー。矢野氏ということで想像できるように、自動的に他PC及びGMへのツッコミ役を果たすことになる。
霧隠才蔵(中村知博氏)
自称「伊賀最強の天才"美少女"忍者」13才。だが、防御と支援特化で攻撃力はほぼ皆無かつ情報収集も苦手で忍者とは一体…… アニマルテイマーで猿の(猿飛)佐助を連れて一緒に戦う。PLは後にダブルクロス・リプレイ・メビウスを著した中村やにお氏。
このリプレイの見どころは、なんといってもその設定のトンチキさにあります。
安土山の頂きに浮いたネオ安土城、またの名を安土パンデモニウムを居城とする織田信長が魔界十字軍を操り、蘇らせたヒュドラ道三やヴィーナス謙信がPC達に襲いかかってくる…… これだけでも頭がクラクラしてくるかと思いますが、蘇らされた戦国武将たちは、それぞれ日本以外の国の神の力を宿し、それぞれ日本〇〇化計画を実行してきます。例えば、先に述べた謙信の場合は日本ローマ化計画で、PCの持ってる馬が突然ペガサスに変化したりもしています。
という感じで、田中天氏の独特なセンスが炸裂しまくった作品ではありますが、そんな中でも、真弓とイクフサはしょっちゅう対立(イチャコラ)したり、NPCの山本勘助(美少女)と真弓が心を通わせたりするなど、ほっこりするエピソードもうまく内包されています。
ダブルクロスは演出で好き放題やりやすい方のTRPGではありますが、こんなことまでできるのか、という視点で見ても面白いかと思います。
それでは、よきリプレイライフを。