44の週刊リプレイ本紹介 5月分

twitterのやつをまとめました。
だいぶ遅くなってしまいましたね…… 5月はグループSNE特集ということでやりました。
特集の定義は、所属者だけですとSNEはともかく他社の場合に選択肢が大幅に減って困ることになりますので、著者名に会社名が併記されているかどうかを基準とさせていただきます。

ソード・ワールド2.0リプレイ 竜伯爵は没落しました! (ドラゴンブック)


第19回は、秋田みやび氏の作品から、「ソード・ワールド2.0リプレイ 竜伯爵は没落しました!」シリーズを選びました。
秋田氏の経歴は多くの所で書かれておりますが、一応紹介させていただくと、もともと事務(経理)でグループSNEに入社したにも関わらず、クリエイターに転身した異色の経歴の持ち主です。秋田氏というと、へっぽこと新米女神シリーズがおなじみですが、この「竜伯爵は没落しました!」は秋田氏の最新シリーズとなります*1
ここからネタバレを含みますが、1巻の巻頭でカラーイラストにもなっている要素なのでご容赦ください。
さて、今作はソード・ワールド2.0のリプレイではありますが、通常の舞台ではなく、蛮族領のディルフラムを舞台(旧SWのファンドリア的なもの)としています。蛮族領ということで、力を持たない人族(人間、エルフ等)は蛮族の奴隷扱い。弱いものは強いものにすがるしか生きていけない世界ですね。
PCは蛮族2人と人族3人で構成されます。主人公はドレイクナイトのロラン・ヴァルテック。ヴァルテック伯爵領の跡取り息子になります。ドレイクナイトは、生来の魔剣を所持してたりドラゴンに変身できたり能力値も優秀だったりする強い種族なのですが、穢れ4点なのでアンデッド化するため蘇生不能だったり守りの剣の範囲内に入れなかったり等の弱点も有します。*2
他の蛮族PCは同じく支配階級であるバジリスクの魔神使いアシュリー。一族が滅んでしまった過去を背負っています。奴隷階級人族は、人間の引きこもり占い師ミレア、ドワーフのコック僧侶カティヤ、ミアキス(猫種族)のグラップラー愛玩動物のルドの3人です。
タイトルに「没落しました」とありますが、1話の最後にヴァルテック領主であるロランの父がの謎の事故死(母は行方不明)を遂げたことにより、跡取り息子であるロランが急遽ヴァルテック領を継ぐことになったことよりストーリーは動いていきます。
弱肉強食である蛮族の世界で、力のないものが後を継ぐと当然のように領地にちょっかいを出されます。まあちょっかいどころではなく、ほぼ実力行使でしたけれど。というわけで父の遺体を確認しに行った隙などにいろいろあった結果、ロラン達は落ち延びることになります。その道中に怪しい小鳥を発見し、パーティーメンバーの中で唯一飛行可能なロランが追跡します。すると、小鳥はゴーレムでフラスコの中の魔法生物がそれを操っており、しかもロラン父の「事故」の状況を知っていることが分かってしまい、ロランが引けなくなってしまいました。いやまあ引いてもいいんですが、多少は追う素振りを見せるのは、ロールプレイ上も自然な範囲かなと。ただそこで大変なことが起こってしまいます。
一発ダメージを受けた後に、ゴーレムの魔法がクリティカルし2回りしたことで、ロランが生死判定に失敗し死亡してしまいます。さすがに跡継ぎまで死亡したことを敵に知られる訳にはいかないので、なんとか残りのメンバーで魔法生物は倒しますが、ヴァルテック領の跡取りがいなくなってしまいました……
ということで、ストーリーがどうやってロランが普通の体を取り戻すかという方向で動いていきます。この展開は、GMが出したちょっとした伏線にPC達が反応し、せっかく反応してくれたんだからとGMが追加情報を出し、そのせいでロランが引かずに深追いした所でクリティカルが入り死亡、という不幸の連鎖が起こってしまっています。
この一連の対応はGM、PC共に最善では無かったかもしれませんでしたが、TRPGでは仕方のない範囲かと思います。ただ、これによって最終的に領を取り戻すという展開が薄まってしまい、話を長く続けられる感じにならなかったのは個人的には少し残念ではあります。
この作品に限らず、ソード・ワールドでは過去のリプレイでもダイスの不幸による死亡がたくさん(バブリーズ、アンマント財宝編、へっぽこ、etc...)起こっていますが、それらの中でも群を抜いて厳しい場面からなんとか蘇生させていることは、マスタリングの参考になるかもしれません。
ただ、ソード・ワールドでは過去のリプレイでもダイスの不幸による死亡がたくさん(バブリーズ、アンマント財宝編、へっぽこ、etc...)起こっていますが、それらの中でも群を抜いて厳しい場面からなんとか蘇生させていることは、マスタリングの参考になるかもしれません。
いろいろ書きましたが、ストーリー自体はとても読みやすく、安心して読める作品ですので、興味が湧いた方は一度手に取ってみてください。
それでは、よきリプレイライフを。

新ソード・ワールドRPGリプレイ集Waltz1 旅立ち・お祭り・子供たち (富士見ドラゴンブック)


第20回は、篠谷志乃氏の作品から、「新ソード・ワールドRPGリプレイ集Waltz」シリーズを選びました。
篠谷氏は、現在はグループSNEのページには記載がありませんが、グループSNEに所属されて居た方で、他にも六門世界RPGシルバーレインRPGのリプレイも執筆されています。
タイトルに「新ソード・ワールドRPG」とありますが、ソード・ワールドRPG完全版に準拠しています。この作品では、さらに簡易戦闘ルールを導入し、敏捷度による行動タイミングの変更や知力による行動宣言順番を廃止した、現在の2.0のものに比較的近いルールとなっています。他にも、キャラメイクで予めメイン技能を割り振ったり副能力値の割り当てルールを採用していたりと、全般的に初心者向けの設定となっています。となっているのも、プレイヤーの一人にTRPG未経験者がいて、導入を分かりやすく(初心者読者にも説明しやすく)するためですね。
PC達は、キャラメイクの話の流れで、全員が孤児院に関係する設定に。

キーナ(15)

真面目な女ファイター、戦闘では主戦力でも日常シーンでは年頃の女の子らしいロールプレイも

ブランシュ(15)

キーナ大好きな女精霊使い。歯に衣を着せない発言も多く、ある意味年頃の女の子

ナジカ(?)

おっとり浮世離れエルフの女ソーサラー。孤児院ではみんなのお母さんながらも、実は一番のトラブルメーカー

アイル(15)

神官戦士兼バード兼料理人。一番年下ポジションの少年だが、実は一番しっかりしている場面も多い。

ディケイ(17)

兄貴分シーフ。他のメンバーが孤児院にて成人したばかりの設定かつ、ナジカが外では頼りにならないので、自動的に彼の担う役割は多岐にわたる……

という5人パーティとなります。インパクト強いキャラが居ないと思われるかもしれません。キャラ設定時点ではインパクトのあるキャラクターはいませんが、いきなりアクの強い設定をするだけがTRPGではないですしね。
このリプレイの全体から感じる雰囲気は、「ほんわか」「ほのぼの」「甘酸っぱい」と云うキーワードがあがりますが、これまでのリプレイとはかなり一線を画した作りとなっています。どちらかというと、TRPGリプレイというよりは小説に近い印象を受けるかもしれません。特に終盤の甘酸っぱいセリフの連打や素直になれないロールプレイは、これがTRPGリプレイなのかと思わせるくらいの出来になっています。F.E.A.R.作品では「熱く」想いを告げるシーンは数多くありますが、甘酸っぱい方向性のはリプレイ全体でも記憶にほとんどないですね。
ただ、ナジカのロールプレイは若干危ういもので、キャラ視点に立ってみるとそれなりに納得はできるものの、キャラ視点をやるだけがTRPGではなく、止められる前提のロールプレイを繰り返すのも、他のPLに負担をかける行為なので、あまり褒められたものではありません。
シナリオ面は、GMのアタフタした描写と「ほんわか」した雰囲気に騙されがちですが、起こっている要素は実は結構えげつなく、小国とかなら十分に滅びうる要素が含まれているのですが、それを強く感じさせないのもこの作品の魅力かと思います。
戦闘面は篠谷GMの出目が全般的に低めかつバランスが甘めということもあり若干物足りなさは感じるのですが、それでもプレイヤーに振らせたダメージロールで事故が起こるあたり、結果的にですがソード・ワールドのクリティカルの怖さを感じさせる展開にもなっています。
戦闘のバランスがガチガチで頭を悩ませ感心させるリプレイもいいですが、このようなストーリー重視で和ませる雰囲気のリプレイもいいものですね。
それでは、よきリプレイライフを。

[まとめ買い] デモンパラサイト・リプレイ剣神(富士見ドラゴンブック)


第21回は、力造氏の作品から、「デモンパラサイト・リプレイ 剣神(ブレードデモンズ)」シリーズを選びました。
力造氏は当時グループSNEに所属しており、セイクリッド・ドラグーンのゲームデザインを行ったり、SNE退社後も神我狩を出版したりなど、現在もTRPG関連で活動されております。
ゲームシステムの「デモンパラサイト」(現在はパラサイトブラッドに版上げ)のジャンルは、現代日本を舞台にした変身ダークヒーロー物になります。その体に悪魔寄生体(デモンパラサイト)を宿し異形の姿に変身可能となった「悪魔憑き」達が、自我を失ったり或いは自らの野望を実現したりするせいで、その力を誤ったことに使用する悪魔憑きと戦う設定のTRPGです。デモンパラサイトの大きな特徴は「食事」で、食事を摂るとHPと衝動が回復するのですが(衝動については説明割愛)、悪魔憑きは金額の高い食事を摂るほどHPが多く回復します。逆に言うと、1万円分の高級ステーキでも1万円分の大量の牛丼でも、ゲーム内効果は同じになります。
他にも、成長に合わせ自動的に技能取得したり、その辺の電柱や車を持ち上げて投げた方が下手な攻撃より強かったり、犬やハムスターでもプレイできたり、宿した悪魔寄生体によっては変身解除時に強制全裸や強制濡れ透け発生など、かなり個性的なシステムになっています。
今作はSNEのリプレイとしては珍しく、プレイヤー名が公表されており、声優の明坂聡美氏、SNEの藤澤さなえ氏、ライターの田中天氏、同じくライターの河村有木生氏の4名で構成されています。そして、キャラメイク中のやり取りから、PC4人は全員兄弟ということになりました。

御剣嵐(アラシ):長男(田中氏)

"天空の射手"アルバレストを宿す。凄腕の傭兵だが基本はトラブルメーカーなダメ兄貴。

御剣颪(オロシ):次男(河村氏)

"悪魔の人形使い"ウォーコイトを宿す。新米刑事。家庭的な性格で苦労症。真ん中はつらいよ。

御剣楓(カエデ):次女(藤澤氏)

"輝く天使"モリオンを宿す。悪魔憑き互助団体セラフィムに所属する食欲魔神女子高生。

御剣凪(ナギ):三男(明坂氏)

"神速の暗殺者"ファランクスを宿す。愛され系末っ子主人公。ちょっとヤンデレな幼馴染の沙織がいる。

PC達はこんな感じで、長女の旋(ツムジ)はNPCとして登場します。また、女性声優をPLに呼ぶのは主にF.E.A.R.のリプレイで多くやっているのですが、演じるのは女性PCばかりでわざわざ男性PCを演じてもらうケースは自分の脳内検索では、未だに他にない気がします。
ストーリーは、ツムジが送ってきた荷物の中にあったエメラルドのような石、それに触ったナギの右手にその石が吸収されてしまった所から始まります。これはアメノムラクモの「欠片」で、それを集めようとする敵との戦いが序盤のメインになっていきます。
この本の一番の特徴は、力造GMのマスタリングですね。だいたいシナリオの冒頭でアラシ(田中天氏)が妄言を吐くのですが、それをさらっと取り入れてシナリオを展開していきます。F.E.A.R.のリプレイでは、こういう妄言の多くは、矢野俊策氏のキャラや菊池たけしGMなどがツッコんでかなりマイルドな形に落とし込むのですが、力造GMはほぼそのまま採用して展開していきます。これはSNE入社以前から多数のGM経験を持つとされる力造氏の経験の賜物ではないかと思います。ただ、あまりにも取り入れすぎて、そのせいでストーリーが強引に見えてしまうという点も無きにしも非ずではありますが。
また、この作品は約10年前ということもあり、明坂氏はデビューしてそこまで経っていない事もあって、かなり初々しい感じのプレイングが見て取れます。結婚ネタなど、今ではどっちかというとネタキャラっぽい(失礼)「あけこ」ですが、当時を懐かしむ意味でもファンの方は手を取ってみてはいかがでしょうか。
それでは、よきリプレイライフを。

[まとめ買い] ソード・ワールド2.0リプレイ Rock 'n Role(富士見ドラゴンブック)


第22回は、ベーテ・有理・黒崎氏の作品から、「ソード・ワールド2.0リプレイ Rock 'n Role」シリーズを選びました。
ベーテ氏はグループSNE所属のライターです。日米ハーフで身長約190cm、体重約200kgというインパクトのせいか、著したリプレイの多くでイラスト化され表紙にも出ているという前人未到の実績があります。また、エヴァ:破に出演した(元)声優という経歴もあったりします。
このリプレイはレンドリフト帝国を舞台とした高レベルリプレイになります。レンドリフト帝国は、力さえあれば人族も蛮族も(ある意味)平等に評価される(アンデッドは例外)完全な実力主義の国家であり、その性質上蛮族を遠ざける「守りの剣」は撤廃されています。
実質的に蛮族領ということもあって、PC達はそれぞれ種族がバラバラになっています。

フレーズ(人間)

デスサイズを操る14歳のアルビノの少女。蛮族領でヴェルグ(後述)に育てられたが過去の記憶を失っている主人公設定。

ヴェルグ(ダークトロール

"聳える鬼神"の二つ名を持つ歴戦の戦士だが、フレーズを拾ったことにより前線から離脱し、自分の技をフレーズに伝えることを決意した設定。強力なガチタンクで実質的主人公。

トワイニア(ワーウルフ

クロスボウシューターで射撃以外興味なし。フレーズのペット相当

ヨミノ(マーマンウィークリング)

ネクロマンサーを目指すアンデッドフェチ。「残念系巨乳美女」。

クルーン(エルフ)

レンドリフトの地でも真面目にライフォスの教え、蛮族も人族も「みんな仲良く」(個人の解釈です)を布教する高司祭。

と個性的な面々になっています。
ストーリーは、大きな目的に対して動くというタイプではなく、個別のエピソードでPC達をそれぞれ掘り下げていくものになっています。
1巻の前書きでベーテ氏が「前々からやってみたかったこと」と語っていますが、from USAシリーズでは大分マイルドになっていたと思わせるくらい、それぞれのエピソードはかなり強烈なものになっています。まあ蛮族ですし過去の怨恨なんかあった日には、技能構成からしてPCを本気で◯しにくる敵くらいは普通ですよね。強力ガチタンクなヴェルグがいるせいもありますが、ソード・ワールド高レベルリプレイの中では、戦闘が全体的にデッドリーな方だと思います。
さて、このリプレイシリーズで避けて通れない話が、殲滅魔法【ピース】のことです。
対象が戦意を失い敵対的行動が一切取れなくなるライフォスの特殊神聖魔法ですが、一話でこれが6ゾロでかかってしまった結果、GMがパニックになってしまったこともあり、PC達に襲いかかっていたティダン信者たちは全員自刃してしまいます。まあGM本人が書いているようにこの裁定は「お勧めされない」ものではあります。冷静に考えると全員全力撤退が妥当な所なんでしょうか。とはいえ、この場合は(この時点でのPC達が知らないことですが)、このティダン信者達は洗脳されていたようなものですので、十分ありな範疇ではないかと思います。
この描写で思い出したのですが、旧版ソード・ワールドで、自分も平和主義者なマーファ神官をプレイし、ほぼ毎回最初の一手で【ピース】を撃つという割と迷惑なプレイをしていた経験があるんですね。しかも起点指定の範囲魔法な2.0と異なり、旧版は自分起点の範囲魔法なので味方も問答無用で巻き込みます。なので、GMの困惑も理解出来て、自分にはあまり責める権利はないですね、というのが正直なところです(苦笑)。
バグベアードに「このロリコンどもめっ」と言わせたことがそのまま載ってるのもどうかという気もしないでもないですが、そういう部分も含めて、豪快なリプレイが気になった人は手にとってみてはどうでしょうか。
それでは、よきリプレイライフを。

*1:ブログ投稿当時

*2:舞台が蛮族領なので、守りの剣は基本ないですが