44の週刊リプレイ本紹介 6月分

twitterのやつをまとめました。
5月がSNE特集だったので、6月はF.E.A.R.特集ということでやりました。

オレの青春が灰と隣り合わせのままダンジョンで終わるはずがない アリアンロッド2E・リプレイ・オンライン (富士見ドラゴンブック)


第23回は、鈴吹太郎氏の作品から、「アリアンロッド2E・リプレイ・オンライン オレの青春が灰と隣り合わせのままダンジョンで終わるはずがない」を選びました。
著者の鈴吹太郎氏は、F.E.A.R.及びゲーム・フィールドの代表取締役社長*1です。執筆作品はそこまで多くはないのですが、PLとしては非常に多くのリプレイに参加されています。リプレイの逸話でいちばん有名なのは「リーンの闇砦」のファラウスですね。
この作品は、オンラインゲームのキャラを通常のPCのように作成し、PLとは別にそのゲームをプレイしている人もそれぞれ存在している多重構造な設定になっています。かなり複雑な設定ですが、ハンドアウトで「ゲームをプレイしている人」≒「PL」と指示することで、プレイに関してのハードルを大きく下げています。入れ子構造なのは相当ハードル高いでしょうしね。整理すると、オンゲ内キャラをアリアンロッドのルールで動かし、PLが演じるのは「ゲームをプレイしている人」(この部分には判定要素なし)という感じになります。
PC≒PL及びオンゲ内キャラを紹介します。一応断っておきますが、PC≒PLなのは設定でありあくまで別人です。

稲垣さん

PLは富士見書房編集の稲垣健氏。各所で婚活ネタでイジられるが、TRPGのヘビープレイヤー。キャラはハーレム主人公系メイジで亡国の王子のイナッシー。

大竹さん

PLはフリーの声優大竹みゆ氏。TRPG界隈では殺意様の愛称で有名でMMOもヘビープレイヤー。キャラはイナッシーに仕えるゴスロリメイド女シーフのノアル。

音々ちゃん

PLは役者の卵の中島音々氏。かつては、鈴吹マユリという名で、アルシャードのリプレイに参加…… という所で気づく人もいるかと思いますが、鈴吹太郎氏の長女さんですね。キャラは斧使いの女戦士ムイ。

菊池さん

PLは副社長菊池たけし氏。尻で水道管を破壊するドロンパ(説明雑)。オンゲ自体にF.E.A.R.が関わっている設定なのでキャラはステマプレイ女アコのカガリ

オンゲ上はイナッシー以外女性キャラということで、稲垣氏の婚活ネタを意識した形になっています。シナリオはなんとなくタイトルからも想像がつくように、オンゲ上である一つの「チート」が用意されており、それをチートと気づかず使用してしまうことで話が進んでいきます。
その「チート」とはギルドサポートデバッグモード》。これを使用するとなんと、HPとMPの現在値が999に、所持金が999,999Gになります*2
こんな状態では、初期シナリオ最高難度も当然のようにあっさりクリアしたところで、驚愕の事実が…… というところで、先の展開もある程度読めるかもしれませんが、詳しい内容は本編を確認していただければと。
この解決法はそのギルドサポートのギミックをうまく利用したものになっており、ちょっとのミスで難易度が格段に跳ね上がる設定で、非常に感心させられました。
さて、演じている対象もほぼほぼ自分なのに、これはTRPGリプレイなのかという疑問が出る人もいるかも知れません。実際に内容を読み進めていくとわかるのですが、PC≒PLなのは「ゲームをプレイしている人」の動機づけ部分以外はフレーバー以上のものではなく、リプレイ部分は普通のTRPGシナリオを越えるものではないので、十分にTRPGリプレイである、というのが私の見解です。
どちらかというと、TRPG内で自分をわちゃわちゃさせる例示的な意味合いとして見ると、しっくり来るかもしれませんね。
このように自分をベースにしたキャラは、私もGURPS PsyonicsでPCを作成してPLをした経験がありますが、これはこれで面白いものですよ。
それでは、よきリプレイライフを。

アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG (ファミ通文庫)

アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG (ファミ通文庫)

アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG (ファミ通文庫)


第24回は、齋藤幸一氏の作品から、「アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG」を選びました。 この本には2つのリプレイが収録されていますが、今回は本のタイトルにもなっている「本当のRPG」の方のみ紹介させていただきます。
齋藤幸一氏は出版当時F.E.A.R.のアルバイトでした。イラクへの派遣経験がある元自衛官という異色の経歴を持ち、ナイトウィザード蒼穹のエンゲージ」に続き、本作が2冊目のリプレイとなります。
「本当のRPG」はゲーマーズ・フィールドにて連載されていた4コマ漫画、「Quick Start!!」(以下"くいすた")とのコラボリプレイになります。はい、4コマ漫画とTRPGリプレイがコラボと聞いても、すぐにピンとくる人は少ないと思いますので、まず、"くいすた"の簡単な紹介をしたいと思います。
くいすたは、女子高生達がいろいろなTRPG*3をするTRPGあるあるネタ満載の4コマ漫画*4になります。作者は安達洋介氏。パズドラヴァンガード等にイラストを提供しているだけではなく、第7回で紹介した「覚悟の扉」などのリプレイでPLとして参加したりもしています。くいすたのキャラ紹介を簡単にすると(学年は2巻当時)

モモ:熱いセリフ好きなルーニー寄りTRPG部部長。2年

サチ:知識の豊富な和マンチだが、サイコロの目は悪い。2年

フミTRPG初心者。人型に留まらないレベルの人外好き。2年

サクラコ:モモの双子の妹。オジサン好きのツッコミ役。2年

池上先輩GMでもPLでも上級者だがネーミングセンスだけはない。大学1年

メイコ:謎の超ゲーマー兄を持つせいか知識の濃い1年生

ののみー:無口なアーティスト系だけどTRPGは結構楽しんでる。1年

高見先生:最年長だが大人気なく超越してるPCを遊ぶのが大好き。仕事があるので参加率低め。

この辺にしておきますが、くいすたは非常に面白いですよ(ダイマ

くいっくすたーと Quick Start!! 1

くいっくすたーと Quick Start!! 1

さて、「本当のRPG」に話を戻すと、くいすたの面々がTRPGで遊んでいた所、GMのサチが図書館から借りてきた本から光が溢れ、ミッドガルドに飛ばされるところから話が始まります。
今作品のPCは、くいすたのキャラがそれぞれ自分をモデルにしてキャラメイクをしたら、というコンセプトで作成されています。さらに、くいすた世界の住民であることを表す "OVL:Quick Start!!" のクラスを全員が1LV所持し、キャラに合わせた特技も一つ習得しています。
さて、今度はPCの紹介です。(くいすたクラスは省略でPL敬称略)

モモ(田中天):ファイター・ワード・ソードマスター

モモは田中天の分身。ガッチリ戦闘系で固めているのもモモっぽく、「ニョール」完備。

フミ(すがのたすく):スカウト・ホムンクルス・ダークワン

ダークワンで《奈落種:ターマイト》を所持しており昆虫人なのだが、ホムンクルスでもあり体はゲル状でできている。

メイコ(安達洋介):ホワイトメイジ・リターナー×2

ビッグブラザー」というコンピュータに支配された未来から歴史を変えるため送り込まれたリターナー

高見先生(鈴吹太郎):ワード×3

モモも所持している"ワード"は神の転生体を意味するクラスなんですが、これだけで先生だし仕方ないねで済まされるレベルのパワーを持つ。なお、神の名は「高見神」

という感じで、こんなヒドイ…… もとい、再現度の高い設定になっています。
シナリオの展開としては、ミッドガルドに飛ばされたモモたちですが、それぞれ紙を持っていることに気づきます。それは、GMサチが用意していたシナリオの一部であり…… ということで、セッションしていたシナリオの中に取り込まれたモモ達が奮闘する展開に…… というのは大筋では間違ってないんですが、メタ視点は必須でお祭り的リプレイなこともあって、ギャグ要素多めのお話となっています。もちろん、サチやサクラコもミッドガルド世界で登場し重要な役割を果たすのですが、残念ながら池上先輩とののみーは登場しません。
このリプレイは、くいすたのキャラ設定の下で割と好き放題やっているPCたちに対し、齋藤GMが時には戸惑いながらもうまくいなしたり、たまに乗っかったりするところがポイントですね。シナリオもメタ視点で難しい所はあるのですが、うまくまとまっていると思います。
TRPGに興味はあるけど、いきなりルルブやリプレイはハードルが高いという方は、ぜひ「Quick Start!!」から手にとって、そこからTRPGやリプレイの面白さを発見してみるのもいいかと思います。
それでは、よきリプレイライフを。

神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ 時を越えた子守歌 (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ 時を越えた子守歌 (GA文庫)

神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ 時を越えた子守歌 (GA文庫)


第25回は、加納正顕氏の作品から、「神曲奏界ポリフォニカRPG リプレイ」シリーズ(時を越えた子守歌、貴方と繋がるハーモニー)を選びました。
著者の加納正顕氏は、TRPGリプレイを主に執筆しており、ダブルクロス・リプレイ・デザイアが特に有名ですね。本作は加納氏初の作品となります。兼業ライターとのことで、普段はサラリーマンをされているとどこかで目にした記憶がありますが、出典が見つけられませんでした。
システムの神曲奏界ポリフォニカRPGですが、同名の作品をTRPG化したもので、基幹システムはSRS(スタンダードRPGシステム)を使用しています。神曲奏界ポリフォニカは2005年にキネティックノベルという形式で発表された後、GA文庫シェアードワールド的に複数のシリーズが展開されました。特に榊一郎氏著のクリムゾン・シリーズは2007年と2009年の2度に渡ってアニメ化もされています。
神曲奏界ポリフォニカの世界観は、人間と精霊とが共存する異世界で、精霊は上級・中級・下級と明確なランク分けがあります。精霊はエネルギー体であるため、よほど下級のもの以外はそのエネルギーを放出することで人間を上回る力を持っています。では人間が精霊に何もできないかというとそんなことはなくて、一部技能者に限られますが「神曲」を奏でることで、精霊に力を与えることができます。
神曲」を奏でられる人間は「神曲楽士」と呼ばれますが、これは国家資格であり非常に狭き門を通過したものだけという設定になっています。精霊は神曲楽士と契約することで、神曲から何倍もの強い力を得ることが出来ますが、これは諸刃の剣であり、他の神曲楽士の影響を受けづらくなったり、神曲は精霊にとっては麻薬のようなものであるため、神曲楽士が急死した場合などに神曲が得られなくなることで精霊が暴走し、エネルギーを無制限に放出するなどして消滅してしまう危険性も孕んでしまいます。
設定説明が長くなったのでこの辺でやめておきまして、PCとPLを紹介します。

ティアン(三田誠氏)

ヤワラベ=シンカゲ流第23代当主で、「拙者」「ござる」口調の前線でも戦える男性神曲楽士。全自動フラグ折機。三田氏のキャラにしては最強度控えめ。

ローゼリエ(矢野俊策氏)

資産家の娘で神曲楽士事務所の所長だが対人恐怖症。そのためバリ島の仮面のようなものを常時着用しているが、精霊の前では大丈夫。

ネル(鈴吹太郎氏)

オウム型の中級精霊でローゼリエと契約。口うるさい性格の女性で、鳥でも運転可能にカスタマイズした車を所持。

バーセル(榊一郎氏)

温厚な性格の白熊型上級精霊。役に立たない3人*5を尻目に一手に事務所の雑用を引き受ける。年かさのため知識も豊富(中の人の有効利用)。

という感じでキャラはかなり濃いですが、そもそもクリムゾンシリーズも十分濃いキャラ達ので見劣りしない感じです。実は2巻でもう一人PCが追加されるのですが、それ自体が大きなネタバレのため、ここでは伏せます。ちなみにPLはリプレイ経験の豊富な合鴨ひろゆき氏です。
ストーリーについて、後に前述したデザイアシリーズで評判となった加納氏ですが、この時点でその片鱗が見えています。全2巻4話ということで、複雑な話は当然できないのですが、その短い中でも精霊の暴走や精霊との契約、精霊と人間との対立といったポリフォニカで描かれている世界観をうまく活かしながら、きれいにストーリーをまとめています。榊氏はリプレイ登場キャラ達が気に入ったのか、後の作品でゲスト出演したり設定を広げたりもしています。
もちろん、ポリフォニカの世界観が頭に入っていないと分かりにくい面もあるのですが、自分もこの作品で初めてポリフォニカに触れてそれなりに理解できたので、そこまで大きな問題ではないかと思われます。なお、私はこれを読んだことで、当時出版されていたポリフォニカ作品を全て購入したことを覚えています(・ω<)
私とは逆に、ポリフォニカ作品が好きな人は、是非このリプレイも手にとっていただければと思います。
それでは、よきリプレイライフを。

ダブルクロス・リプレイ・ジパング(1) 戦国ラグナロク (富士見ドラゴン・ブック)


第26回は、田中天氏の作品から、「ダブルクロス・リプレイ・ジパング」シリーズを選びました。
著者の田中天氏は、何度もPLとしては紹介していますね。フリーライターではありますが、F.E.A.R.作品で非常に多く出演されています。「大惨事発生装置」などの異名もあったりしますが、年を経るにつれてやや控えめになってきている気もしますね*6
この作品で使用するシステムはダブルクロスの2ndEditionで、2nd最後のリプレイです。ダブルクロスはいくつかの背景世界(ステージ)が提示されており、この作品では「平安京物怪録」ステージ要素を一部流用していますが、新たに「ジパング」というステージが設定され、とある時より分岐したトンデモ戦国時代を舞台としています。簡単に説明すると、退魔師や忍者、妖怪や人ならざる技を持つ一部の剣豪は全部オーヴァードだったという感じでしょうか。
ストーリーの導入は、現代で平凡な高校生として生活していたPC1と、最近同居を始めた10歳の従兄弟の勇太が、突如目の前に出現した"穴"に吸い込まれ、トンデモ戦国時代にタイムスリップしてしまった、というところから始まっています。PC達を紹介すると

天野真弓(水野暁子氏)

導入でのPC1役。面倒見の良い女子高生。年齢の割に精神的にはタフであり、タイムスリップしてもめげない性格。命中後にダイスペナルティを与える強力な「トキジクの弓」を授かり、戦闘でも活躍。PLの水野氏はGMらのゲーム仲間とのこと。

イクフサ(細野君郎氏)

本性は巨大な狼のキュマイラ大妖怪だが、敵の魔縄ドラウプニルで巨岩に封印されていた。流れで真弓に封印を解かれる、孫悟空犬夜叉ポジションで、一番のツンデレ。細野氏は田中天氏や矢野俊策氏とは学生時代からの付き合いとのこと。

山住浄ノ進(矢野俊策氏)

物腰は柔らかだが、病弱で事あるごとに喀血しまくる退魔師。その血で従者を生み出すブラム=ストーカー。矢野氏ということで想像できるように、自動的に他PC及びGMへのツッコミ役を果たすことになる。

霧隠才蔵(中村知博氏)

自称「伊賀最強の天才"美少女"忍者」13才。だが、防御と支援特化で攻撃力はほぼ皆無かつ情報収集も苦手で忍者とは一体…… アニマルテイマーで猿の(猿飛)佐助を連れて一緒に戦う。PLは後にダブルクロス・リプレイ・メビウスを著した中村やにお氏。

このリプレイの見どころは、なんといってもその設定のトンチキさにあります。
安土山の頂きに浮いたネオ安土城、またの名を安土パンデモニウムを居城とする織田信長が魔界十字軍を操り、蘇らせたヒュドラ道三やヴィーナス謙信がPC達に襲いかかってくる…… これだけでも頭がクラクラしてくるかと思いますが、蘇らされた戦国武将たちは、それぞれ日本以外の国の神の力を宿し、それぞれ日本〇〇化計画を実行してきます。例えば、先に述べた謙信の場合は日本ローマ化計画で、PCの持ってる馬が突然ペガサスに変化したりもしています。
という感じで、田中天氏の独特なセンスが炸裂しまくった作品ではありますが、そんな中でも、真弓とイクフサはしょっちゅう対立(イチャコラ)したり、NPC山本勘助(美少女)と真弓が心を通わせたりするなど、ほっこりするエピソードもうまく内包されています。
ダブルクロスは演出で好き放題やりやすい方のTRPGではありますが、こんなことまでできるのか、という視点で見ても面白いかと思います。
それでは、よきリプレイライフを。

*1:社長としての名義は「中島純一郎」

*2:通常の1LVPCのHPMPは30前後

*3:ほとんどF.E.A.R.作品ですが

*4:全4巻

*5:2人と1羽?

*6:個人の感想です

44の週刊リプレイ本紹介 5月分

twitterのやつをまとめました。
だいぶ遅くなってしまいましたね…… 5月はグループSNE特集ということでやりました。
特集の定義は、所属者だけですとSNEはともかく他社の場合に選択肢が大幅に減って困ることになりますので、著者名に会社名が併記されているかどうかを基準とさせていただきます。

ソード・ワールド2.0リプレイ 竜伯爵は没落しました! (ドラゴンブック)


第19回は、秋田みやび氏の作品から、「ソード・ワールド2.0リプレイ 竜伯爵は没落しました!」シリーズを選びました。
秋田氏の経歴は多くの所で書かれておりますが、一応紹介させていただくと、もともと事務(経理)でグループSNEに入社したにも関わらず、クリエイターに転身した異色の経歴の持ち主です。秋田氏というと、へっぽこと新米女神シリーズがおなじみですが、この「竜伯爵は没落しました!」は秋田氏の最新シリーズとなります*1
ここからネタバレを含みますが、1巻の巻頭でカラーイラストにもなっている要素なのでご容赦ください。
さて、今作はソード・ワールド2.0のリプレイではありますが、通常の舞台ではなく、蛮族領のディルフラムを舞台(旧SWのファンドリア的なもの)としています。蛮族領ということで、力を持たない人族(人間、エルフ等)は蛮族の奴隷扱い。弱いものは強いものにすがるしか生きていけない世界ですね。
PCは蛮族2人と人族3人で構成されます。主人公はドレイクナイトのロラン・ヴァルテック。ヴァルテック伯爵領の跡取り息子になります。ドレイクナイトは、生来の魔剣を所持してたりドラゴンに変身できたり能力値も優秀だったりする強い種族なのですが、穢れ4点なのでアンデッド化するため蘇生不能だったり守りの剣の範囲内に入れなかったり等の弱点も有します。*2
他の蛮族PCは同じく支配階級であるバジリスクの魔神使いアシュリー。一族が滅んでしまった過去を背負っています。奴隷階級人族は、人間の引きこもり占い師ミレア、ドワーフのコック僧侶カティヤ、ミアキス(猫種族)のグラップラー愛玩動物のルドの3人です。
タイトルに「没落しました」とありますが、1話の最後にヴァルテック領主であるロランの父がの謎の事故死(母は行方不明)を遂げたことにより、跡取り息子であるロランが急遽ヴァルテック領を継ぐことになったことよりストーリーは動いていきます。
弱肉強食である蛮族の世界で、力のないものが後を継ぐと当然のように領地にちょっかいを出されます。まあちょっかいどころではなく、ほぼ実力行使でしたけれど。というわけで父の遺体を確認しに行った隙などにいろいろあった結果、ロラン達は落ち延びることになります。その道中に怪しい小鳥を発見し、パーティーメンバーの中で唯一飛行可能なロランが追跡します。すると、小鳥はゴーレムでフラスコの中の魔法生物がそれを操っており、しかもロラン父の「事故」の状況を知っていることが分かってしまい、ロランが引けなくなってしまいました。いやまあ引いてもいいんですが、多少は追う素振りを見せるのは、ロールプレイ上も自然な範囲かなと。ただそこで大変なことが起こってしまいます。
一発ダメージを受けた後に、ゴーレムの魔法がクリティカルし2回りしたことで、ロランが生死判定に失敗し死亡してしまいます。さすがに跡継ぎまで死亡したことを敵に知られる訳にはいかないので、なんとか残りのメンバーで魔法生物は倒しますが、ヴァルテック領の跡取りがいなくなってしまいました……
ということで、ストーリーがどうやってロランが普通の体を取り戻すかという方向で動いていきます。この展開は、GMが出したちょっとした伏線にPC達が反応し、せっかく反応してくれたんだからとGMが追加情報を出し、そのせいでロランが引かずに深追いした所でクリティカルが入り死亡、という不幸の連鎖が起こってしまっています。
この一連の対応はGM、PC共に最善では無かったかもしれませんでしたが、TRPGでは仕方のない範囲かと思います。ただ、これによって最終的に領を取り戻すという展開が薄まってしまい、話を長く続けられる感じにならなかったのは個人的には少し残念ではあります。
この作品に限らず、ソード・ワールドでは過去のリプレイでもダイスの不幸による死亡がたくさん(バブリーズ、アンマント財宝編、へっぽこ、etc...)起こっていますが、それらの中でも群を抜いて厳しい場面からなんとか蘇生させていることは、マスタリングの参考になるかもしれません。
ただ、ソード・ワールドでは過去のリプレイでもダイスの不幸による死亡がたくさん(バブリーズ、アンマント財宝編、へっぽこ、etc...)起こっていますが、それらの中でも群を抜いて厳しい場面からなんとか蘇生させていることは、マスタリングの参考になるかもしれません。
いろいろ書きましたが、ストーリー自体はとても読みやすく、安心して読める作品ですので、興味が湧いた方は一度手に取ってみてください。
それでは、よきリプレイライフを。

新ソード・ワールドRPGリプレイ集Waltz1 旅立ち・お祭り・子供たち (富士見ドラゴンブック)


第20回は、篠谷志乃氏の作品から、「新ソード・ワールドRPGリプレイ集Waltz」シリーズを選びました。
篠谷氏は、現在はグループSNEのページには記載がありませんが、グループSNEに所属されて居た方で、他にも六門世界RPGシルバーレインRPGのリプレイも執筆されています。
タイトルに「新ソード・ワールドRPG」とありますが、ソード・ワールドRPG完全版に準拠しています。この作品では、さらに簡易戦闘ルールを導入し、敏捷度による行動タイミングの変更や知力による行動宣言順番を廃止した、現在の2.0のものに比較的近いルールとなっています。他にも、キャラメイクで予めメイン技能を割り振ったり副能力値の割り当てルールを採用していたりと、全般的に初心者向けの設定となっています。となっているのも、プレイヤーの一人にTRPG未経験者がいて、導入を分かりやすく(初心者読者にも説明しやすく)するためですね。
PC達は、キャラメイクの話の流れで、全員が孤児院に関係する設定に。

キーナ(15)

真面目な女ファイター、戦闘では主戦力でも日常シーンでは年頃の女の子らしいロールプレイも

ブランシュ(15)

キーナ大好きな女精霊使い。歯に衣を着せない発言も多く、ある意味年頃の女の子

ナジカ(?)

おっとり浮世離れエルフの女ソーサラー。孤児院ではみんなのお母さんながらも、実は一番のトラブルメーカー

アイル(15)

神官戦士兼バード兼料理人。一番年下ポジションの少年だが、実は一番しっかりしている場面も多い。

ディケイ(17)

兄貴分シーフ。他のメンバーが孤児院にて成人したばかりの設定かつ、ナジカが外では頼りにならないので、自動的に彼の担う役割は多岐にわたる……

という5人パーティとなります。インパクト強いキャラが居ないと思われるかもしれません。キャラ設定時点ではインパクトのあるキャラクターはいませんが、いきなりアクの強い設定をするだけがTRPGではないですしね。
このリプレイの全体から感じる雰囲気は、「ほんわか」「ほのぼの」「甘酸っぱい」と云うキーワードがあがりますが、これまでのリプレイとはかなり一線を画した作りとなっています。どちらかというと、TRPGリプレイというよりは小説に近い印象を受けるかもしれません。特に終盤の甘酸っぱいセリフの連打や素直になれないロールプレイは、これがTRPGリプレイなのかと思わせるくらいの出来になっています。F.E.A.R.作品では「熱く」想いを告げるシーンは数多くありますが、甘酸っぱい方向性のはリプレイ全体でも記憶にほとんどないですね。
ただ、ナジカのロールプレイは若干危ういもので、キャラ視点に立ってみるとそれなりに納得はできるものの、キャラ視点をやるだけがTRPGではなく、止められる前提のロールプレイを繰り返すのも、他のPLに負担をかける行為なので、あまり褒められたものではありません。
シナリオ面は、GMのアタフタした描写と「ほんわか」した雰囲気に騙されがちですが、起こっている要素は実は結構えげつなく、小国とかなら十分に滅びうる要素が含まれているのですが、それを強く感じさせないのもこの作品の魅力かと思います。
戦闘面は篠谷GMの出目が全般的に低めかつバランスが甘めということもあり若干物足りなさは感じるのですが、それでもプレイヤーに振らせたダメージロールで事故が起こるあたり、結果的にですがソード・ワールドのクリティカルの怖さを感じさせる展開にもなっています。
戦闘のバランスがガチガチで頭を悩ませ感心させるリプレイもいいですが、このようなストーリー重視で和ませる雰囲気のリプレイもいいものですね。
それでは、よきリプレイライフを。

[まとめ買い] デモンパラサイト・リプレイ剣神(富士見ドラゴンブック)


第21回は、力造氏の作品から、「デモンパラサイト・リプレイ 剣神(ブレードデモンズ)」シリーズを選びました。
力造氏は当時グループSNEに所属しており、セイクリッド・ドラグーンのゲームデザインを行ったり、SNE退社後も神我狩を出版したりなど、現在もTRPG関連で活動されております。
ゲームシステムの「デモンパラサイト」(現在はパラサイトブラッドに版上げ)のジャンルは、現代日本を舞台にした変身ダークヒーロー物になります。その体に悪魔寄生体(デモンパラサイト)を宿し異形の姿に変身可能となった「悪魔憑き」達が、自我を失ったり或いは自らの野望を実現したりするせいで、その力を誤ったことに使用する悪魔憑きと戦う設定のTRPGです。デモンパラサイトの大きな特徴は「食事」で、食事を摂るとHPと衝動が回復するのですが(衝動については説明割愛)、悪魔憑きは金額の高い食事を摂るほどHPが多く回復します。逆に言うと、1万円分の高級ステーキでも1万円分の大量の牛丼でも、ゲーム内効果は同じになります。
他にも、成長に合わせ自動的に技能取得したり、その辺の電柱や車を持ち上げて投げた方が下手な攻撃より強かったり、犬やハムスターでもプレイできたり、宿した悪魔寄生体によっては変身解除時に強制全裸や強制濡れ透け発生など、かなり個性的なシステムになっています。
今作はSNEのリプレイとしては珍しく、プレイヤー名が公表されており、声優の明坂聡美氏、SNEの藤澤さなえ氏、ライターの田中天氏、同じくライターの河村有木生氏の4名で構成されています。そして、キャラメイク中のやり取りから、PC4人は全員兄弟ということになりました。

御剣嵐(アラシ):長男(田中氏)

"天空の射手"アルバレストを宿す。凄腕の傭兵だが基本はトラブルメーカーなダメ兄貴。

御剣颪(オロシ):次男(河村氏)

"悪魔の人形使い"ウォーコイトを宿す。新米刑事。家庭的な性格で苦労症。真ん中はつらいよ。

御剣楓(カエデ):次女(藤澤氏)

"輝く天使"モリオンを宿す。悪魔憑き互助団体セラフィムに所属する食欲魔神女子高生。

御剣凪(ナギ):三男(明坂氏)

"神速の暗殺者"ファランクスを宿す。愛され系末っ子主人公。ちょっとヤンデレな幼馴染の沙織がいる。

PC達はこんな感じで、長女の旋(ツムジ)はNPCとして登場します。また、女性声優をPLに呼ぶのは主にF.E.A.R.のリプレイで多くやっているのですが、演じるのは女性PCばかりでわざわざ男性PCを演じてもらうケースは自分の脳内検索では、未だに他にない気がします。
ストーリーは、ツムジが送ってきた荷物の中にあったエメラルドのような石、それに触ったナギの右手にその石が吸収されてしまった所から始まります。これはアメノムラクモの「欠片」で、それを集めようとする敵との戦いが序盤のメインになっていきます。
この本の一番の特徴は、力造GMのマスタリングですね。だいたいシナリオの冒頭でアラシ(田中天氏)が妄言を吐くのですが、それをさらっと取り入れてシナリオを展開していきます。F.E.A.R.のリプレイでは、こういう妄言の多くは、矢野俊策氏のキャラや菊池たけしGMなどがツッコんでかなりマイルドな形に落とし込むのですが、力造GMはほぼそのまま採用して展開していきます。これはSNE入社以前から多数のGM経験を持つとされる力造氏の経験の賜物ではないかと思います。ただ、あまりにも取り入れすぎて、そのせいでストーリーが強引に見えてしまうという点も無きにしも非ずではありますが。
また、この作品は約10年前ということもあり、明坂氏はデビューしてそこまで経っていない事もあって、かなり初々しい感じのプレイングが見て取れます。結婚ネタなど、今ではどっちかというとネタキャラっぽい(失礼)「あけこ」ですが、当時を懐かしむ意味でもファンの方は手を取ってみてはいかがでしょうか。
それでは、よきリプレイライフを。

[まとめ買い] ソード・ワールド2.0リプレイ Rock 'n Role(富士見ドラゴンブック)


第22回は、ベーテ・有理・黒崎氏の作品から、「ソード・ワールド2.0リプレイ Rock 'n Role」シリーズを選びました。
ベーテ氏はグループSNE所属のライターです。日米ハーフで身長約190cm、体重約200kgというインパクトのせいか、著したリプレイの多くでイラスト化され表紙にも出ているという前人未到の実績があります。また、エヴァ:破に出演した(元)声優という経歴もあったりします。
このリプレイはレンドリフト帝国を舞台とした高レベルリプレイになります。レンドリフト帝国は、力さえあれば人族も蛮族も(ある意味)平等に評価される(アンデッドは例外)完全な実力主義の国家であり、その性質上蛮族を遠ざける「守りの剣」は撤廃されています。
実質的に蛮族領ということもあって、PC達はそれぞれ種族がバラバラになっています。

フレーズ(人間)

デスサイズを操る14歳のアルビノの少女。蛮族領でヴェルグ(後述)に育てられたが過去の記憶を失っている主人公設定。

ヴェルグ(ダークトロール

"聳える鬼神"の二つ名を持つ歴戦の戦士だが、フレーズを拾ったことにより前線から離脱し、自分の技をフレーズに伝えることを決意した設定。強力なガチタンクで実質的主人公。

トワイニア(ワーウルフ

クロスボウシューターで射撃以外興味なし。フレーズのペット相当

ヨミノ(マーマンウィークリング)

ネクロマンサーを目指すアンデッドフェチ。「残念系巨乳美女」。

クルーン(エルフ)

レンドリフトの地でも真面目にライフォスの教え、蛮族も人族も「みんな仲良く」(個人の解釈です)を布教する高司祭。

と個性的な面々になっています。
ストーリーは、大きな目的に対して動くというタイプではなく、個別のエピソードでPC達をそれぞれ掘り下げていくものになっています。
1巻の前書きでベーテ氏が「前々からやってみたかったこと」と語っていますが、from USAシリーズでは大分マイルドになっていたと思わせるくらい、それぞれのエピソードはかなり強烈なものになっています。まあ蛮族ですし過去の怨恨なんかあった日には、技能構成からしてPCを本気で◯しにくる敵くらいは普通ですよね。強力ガチタンクなヴェルグがいるせいもありますが、ソード・ワールド高レベルリプレイの中では、戦闘が全体的にデッドリーな方だと思います。
さて、このリプレイシリーズで避けて通れない話が、殲滅魔法【ピース】のことです。
対象が戦意を失い敵対的行動が一切取れなくなるライフォスの特殊神聖魔法ですが、一話でこれが6ゾロでかかってしまった結果、GMがパニックになってしまったこともあり、PC達に襲いかかっていたティダン信者たちは全員自刃してしまいます。まあGM本人が書いているようにこの裁定は「お勧めされない」ものではあります。冷静に考えると全員全力撤退が妥当な所なんでしょうか。とはいえ、この場合は(この時点でのPC達が知らないことですが)、このティダン信者達は洗脳されていたようなものですので、十分ありな範疇ではないかと思います。
この描写で思い出したのですが、旧版ソード・ワールドで、自分も平和主義者なマーファ神官をプレイし、ほぼ毎回最初の一手で【ピース】を撃つという割と迷惑なプレイをしていた経験があるんですね。しかも起点指定の範囲魔法な2.0と異なり、旧版は自分起点の範囲魔法なので味方も問答無用で巻き込みます。なので、GMの困惑も理解出来て、自分にはあまり責める権利はないですね、というのが正直なところです(苦笑)。
バグベアードに「このロリコンどもめっ」と言わせたことがそのまま載ってるのもどうかという気もしないでもないですが、そういう部分も含めて、豪快なリプレイが気になった人は手にとってみてはどうでしょうか。
それでは、よきリプレイライフを。

*1:ブログ投稿当時

*2:舞台が蛮族領なので、守りの剣は基本ないですが

44の週刊リプレイ本紹介 4月分

twitterのやつをまとめました。
4月はネタ成分多めで結構頑張った気がするのですが、フォロワー以外からの反応はありませんでした。泡沫ついったらーだしちかたないね。

スーパーリプレイ三国志 (マルチプレイコレクション)


第14回は、シブサワ・コウ監修、F.E.A.R.編集の作品から、「スーパーリプレイ三国志 (マルチプレイコレクション)」を選びました。(初版発行日1994年12月30日)※今回はネタバレしまくりです
これは、光栄(現コーエーテクモ)の「三國志」シリーズ作品(コンシューマーゲーム版)においてマルチプレイした様子をリプレイにした作品になっています。とは言っても、本来のゲームの目的である中国統一を最終目標にしてしまうと、ダラダラ長く続くだけでなく、途中離脱するプレイヤーも出てしまうので、数時間で終わる独自ルールを設定(概ねゲーム内時間1年程度)しています。
著者陣は巻末に紹介があり、メインは臼木照晶氏のようです。臼木氏は当時F.E.A.R.所属で、以降RPG福袋やMtGのスタートブックなどを執筆しています。他にも、現在はD&D関係で活躍されている桂令夫氏が「記事構成」として、アリアンロッド・サガ・リプレイ・IFを執筆した現F.E.A.R.の営業部長の たのあきら氏が「監督」として、デスダンジョン制作の名手として名前が上がる関根博寿氏が「ルール考案・他」と記載があります。
本作には4編のリプレイが掲載されており、それぞれ別の三國志作品を用いていますが、プレイヤー4人は共通している設定です。簡単に説明すると、パワー系プレイの道治、堅実かつずる賢い祐二、抜け目のない性格の晴美、ゲーム初心者の香理となります。
1本目はスーパーファミコンSFC)の「スーパー三國志」を使用し、ルールは簡単に言うと、董卓シナリオで1年の間に一番多く領土を拡張した人が勝利となっています。君主(国)はプレイヤーが任意に選択し、道治:劉備、祐二:孫堅、晴美:曹操、香理:袁紹となりました。
この条件だけで、「スーパー三國志」ではなくともコーエー三國志をプレイした人ならすぐにピンとくると思うのですが、結果は祐二(孫堅)が圧勝します。董卓シナリオの孫堅は、周りに空白地が多く配下も多いので簡単に領土拡張できるのです。これはルール設定上のミスと言っても過言ではないでしょう。他にも初心者の香理から複数のプレーヤーで配下武将を引き抜くなどダメな部分もありますが、どちらかと言うと、そのまま記述してしまうことで、実際にプレイしているリアリティが高まってる気もします。
2本目は「三國志ゲームボーイ版」を使用し、初心者香理への指導という形をとっています。ルールは2人対戦で1年間の間に多くの武将を配下にした方が勝ちというものです。
今回は戦闘を簡略化しているシンプルモードを用いているのですが、これがかなりの足かせになっています。他のシリーズと違い短時間で終われるためにつけたと思われるシンプルモードですが、戦闘はランダム寄りでバラツキが大きく、空白地に攻め込むと確率で大量の兵が在野武将と一緒に湧いてきて戦闘になってしまい、しかも自分が1国のみだけなら負けた瞬間ゲームオーバーでは、そもそもプレイする条件として厳しいとしか言いようがありません。リプレイ中でも、香理操る呂布が兵力45、COMの関羽が兵力23で、シンプルモード故に戦闘中操作できない中で計略連打で呂布が負けており、これでは初心者がかわいそうすぎます。
3本目はSFCの「スーパー三國志II」、ルールは呂布シナリオで1年間、君主ごとに異なる勝利条件を設定し、それを満たしたものが勝ちとなっています。選択した君主は、道治:呂布、祐二:劉備、晴美:曹操、香理:袁紹となり、曹操袁紹は領土拡張・維持系、劉備は五虎将を4人以上集める、呂布は一騎打ちで6勝するのが勝利条件です。
呂布はもちろん一騎打ちではほぼ無敵ですが、COM相手だと武力差が大きく一騎打ちを受けてくれないため、ルールで一騎打ち拒否不能なPL国をイナゴ戦術的に狙うという展開になってしまい、盤面が荒れ呂布に狙われまくった晴美(曹操)は勝利条件を満たすのが不可能、香理(袁紹)は初心者故ルール把握できておらず公孫瓚戦で満足してしまう。祐二(劉備)はシナリオ上1年目に黄忠が登場しないという罠にハマるなどヒドイ結果に。最後は埋伏の張飛呂布と一騎打ちして耐えきり、呂布を5勝にとどめて勝利者なしというある意味劇的な結末でした。これはまあ1年という期間でバランスよくルール設定をするのは難しく、むしろ勝利者なしということはそれなりにバランス取れていたことの証かもしれません。
4本目はSFC版の「三國志III」、ルールは董卓シナリオで1年間、一人が董卓を担当し董卓を倒したものが勝利、董卓は守りきれば勝利というものです。選択した君主は、道治:劉備、祐二:董卓、晴美:曹操、香理:袁紹となりました。
序盤に道治(劉備)が韓馥を攻めますが、なんとここで兵糧不足で敗北し事実上ゲーム離脱という苦しい展開。三國志IIIは戦闘MAPが広く移動力が重要で、これには士気というパラメータを上げることが必要なんですが、これは兵の訓練度を上げる「訓練」*1とは別の「戦争準備」というコマンドを行う必要があるため、これを怠って移動力不足で敗北したと思われます。そんな中、晴美(曹操)・香理(袁紹)は地道に兵を蓄え戦力を充実させ、やることがなくなった劉備関羽曹操に埋伏させることで、なんとかゲームに参加してる感を得ます。
祐二(董卓)に対し先に攻め込んだのは袁紹でした。事前に曹操から共同作戦の申し出があった袁紹ですが、自力だけで十分とこれを拒否。そうならばと、曹操董卓への援軍*2を申し出ます。戦力に劣る董卓はこれを了承し、曹操軍も戦場に参加することになります。袁紹は戦力に勝りますが、顔良が勝手に呂布との一騎打ちを受け敗北するなど苦しい展開になります。
そこで、満を持して曹操が裏切り董卓軍に攻撃を仕掛けます。やぶれかぶれの董卓は挑発し、曹操軍の関羽からの一騎打ちを董卓本人が受諾する展開に。ここで一騎打ちで勝利し董卓を捕えれば曹操の勝利だったのですが、なんと、董卓関羽を下すという意外な展開に。しかし二人がかりで迫られては多勢に無勢、洛陽は袁紹支配下になりました。このまま洛陽を1ヶ月支配すれば、香理(袁紹)の勝利だったのですが…
ここでちょうど収入月が訪れ、董卓に搾取されまくっていた洛陽の民は当然のように住民反乱を起こし、袁紹の兵力にダメージを与えます。董卓の反撃は逆に攻撃することで相手の行動力を奪い防いだものの、なんとここで晴美(曹操)が同盟破棄し袁紹に攻撃を仕掛けます。兵力ではトントンだったものの、パニックになったせいか対応を誤り袁紹曹操に敗北。ついでに袁紹は斬首されてしまいました。こうなっては反撃も難しく、このまま晴美(曹操)の勝利となりました。
とツラツラと書いてきましたが、この展開ヒドすぎですね。香理は初心者を脱しつつあったとはいえ、さすがにマルチプレイでこれはやりすぎ感が否めません。とはいえ、そうしないと勝利者にはなれないわけで、協力部分と対戦部分のコンフリクトは難しいですね。
今日*3はエイプリルフールですが、これは架空の本ではなく実際に光栄から出版された本ですからね。写真も含めて本物ですと念をおしておきます。
それでは、よきリプレイライフを。

アリアンロッド・リプレイ・レジェンド(1) 貧乏姉妹の挑戦 (富士見ドラゴン・ブック)


第15回は、丹藤武敏氏の作品から、「アリアンロッド・リプレイ・レジェンド」シリーズを選びました。
著者の丹藤氏はF.E.A.R.所属の方でこの作品が初のリプレイ作品となります。元はシナリオを投稿していたそうで、その縁からF.E.A.R.所属となり、主にシナリオ執筆を担当していたと1巻に記載があります。
プレイヤーには、鈴吹太郎氏、田中信二氏、藤井忍氏に加え、(当時?)富士見書房編集の妹尾氏を迎えています。PCは、各巻のサブタイトルにある「貧乏姉妹」フレアとセレネを妹尾氏と藤井氏、中二病のユーノスを田中氏、ツッコミ役のドルを鈴吹氏がそれぞれ演じています。
背景は、冒険者としても商人としても成功し風雲児と異名を持つ「貧乏姉妹」の父親が、行方不明となり大負債を抱えてしまったため、その借金を返済するため、姉妹たち「コロローナ商会」は怪しいコロシアム「Fリーグ」に参加せざるを得なくなった、という設定です。
姉妹が双子だったり、借金返済をTRPGのメインシナリオに据えたりするのは定番ではあるのですが、このリプレイの面白いところは、その「Fリーグ」絡みで登場するNPC達が数多く登場し、いずれもインパクトの強い設定があるところです。
いくつか例を挙げると、

ゴージャスサンズ

金持ちの息子たちが道楽でFリーグに参加。金持ちなので、装備品は無駄に高いものを使用し(といってもアリアンロッドRPGは装備にレベル制限ありますが)、高価なクリスタルブレイドを無駄に使い捨てPC達に精神ダメージを与える。

セレスチャルフォース

ギルドメンバー全員が現在進行系で中二病に罹患しており、全員その「設定」の元に発言・行動する。ちなみに、ユーノスが以前所属していたギルドであり、その天使性(中二病性)の違いによりユーノスは袂を分かった過去がある。

など全部あげていくとキリがないのでこの辺にしますが、非常に濃い設定になっています。他にも多くの色物NPCが登場していますが、過去作からも「無印」のシグとシルヴァや、「ルージュ」で(ある意味)人気となったマティアスが借金取りとしてPC達をたびたび苦しめたり、ジュライが依頼人として登場したりするなど、過去作ファンへのサービスにもなっています。
NPC達があまりにイロモノすぎるので若干印象は薄れていたりもしますが、今作では、借金返済する心を上手にくすぐるようなトラップなどを「コロシアム」のイベントとして設定していたりするなど、シナリオ・ダンジョン面でもうまく設計されています。
PCたちも、妹尾氏演じる姉のフレアが普段は天真爛漫なキャラながらも、「天然ツッコミ」と作中で評される、とっさの返しが毒舌みたいになってしまうキャラ付け(PLの天然?)がうまくアクセントになっていて、個性溢れまくるNPCたちとのやり取りがうまく引き立っており、思わず笑いが出てしまう場面も多いです。
全体として笑いの成分が多めながらも、実はしっかりとシナリオが作成されており、初心者GM向けのリプレイでもあると思います。
それでは、よきリプレイライフを。

ロードス島戦記―英雄騎士スパーク (角川mini文庫 (133))


ロードス30周年ということで、突発で番外編を行います。
番外編の1回目は、水野良氏の作品から、「ロードス島戦記―英雄騎士スパーク」 を選びました。
写真を見てお分かりになるかと思いますが、これは文庫よりも更に小さいサイズ(新書の約半分)で刊行された作品になります。多分ですが、商業出版されたリプレイ本の中では、最もサイズが小さく、そして最も定価の安い(本体200円)の作品になるかと思います。
この作品は、上の写真のサイズ比較に置いてある、「ロードス島戦記III」の後日譚にあたります。とはいえ、IIIのリプレイがコンプティークに掲載されてから、8年後に行われたプレイのため、キャラ設定はそのままですが、歴史設定は小説版を準拠した形になっています。キャラ設定が以前のリプレイ準拠なので、主人公スパークの性格が小説版とはかなり異なり、大分おちゃらけたキャラになっていますので、小説版しか知らない人は違和感ありまくりどころか、ぜんぜん違う人に見えるかもしれません。
シナリオの方は短編ということもあり、そんなに複雑な要素もないのですが、小説の伏線を張って終了する(その伏線が回収されたかどうかは忘れてしまいましたが)のは珍しいかと思います。
水野氏のリプレイはキャラ同士の小気味のいい掛け合いを売りとしているため、このmini文庫とは非常に相性がよく、小さいサイズでしかもわずか128pながら、結構読み応えのある分量となっています。
小説版の主人公スパークしか知らない人も、リプレイ版のおちゃらけスパーク君に一度触れてみるのも見方が変わっていいかもしれません。
それでは、よきリプレイライフを。

【TRPGリプレイ】グランクレスト・リプレイ かけだし君主の魔王修業 (全2冊)


第16回は、中村やにお氏の作品から、「グランクレスト・リプレイ かけだし君主の魔王修業」シリーズを選びました*4
著者のやにお氏は、ダブルクロスリプレイのアカデミアとメビウスで今までのダブルクロスとは一風変わった作品を執筆しており、両リプレイとも声優が2名参加されているのですが、メビウスとアカデミアはその声優2名の特徴をうまく活かしたリプレイとなっています。
この作品のプレイヤーには、やはり声優の藤井ゆきよ氏を迎え、その脇をリプレイ常連の矢野俊策氏と田中天氏、そしてイラストレーターであり「モノトーンミュージアムRPG」の作者でもある、すがのたすく氏の3名が脇を固める布陣となっています。プレイヤーは4名ですが、導入も兼ねているのか第1話は藤井氏と矢野氏の2名のみの参加となっています。さて、グランクレストといえばもちろん「ロード」の扱いですが、そのロードである主人公のエルザを藤井氏が演じています。
当初は、未経験(?)の藤井氏の参加を考慮して、オーソドックスなゴブリン退治から始まる初心者向けリプレイを予定していたようです。しかし、そのゴブリンにGMが変なキャラ付けをしたことより、藤井氏演じるエルザからGMの想定にない発言が生まれ、物語は思わぬ方向に転がり始めます。

エルザ:(ゴブリンに)喋れるみたいだし、事情を聞きたい。 1巻83p

これは、ムダに松○修○氏のような「熱い」発言をゴブリンにさせてしまったGMの自業自得感もあるのですが、ゴブリン退治のシナリオでゴブリンの詳細な背景設定は通常しないことが多いと思います。
ここで作成済みの(当初の)第2話のシナリオを先取りし、そこと整合性を撮ったことでゴブリンにも事情がある設定になり、エルザがそれを助けに行く展開になってしまいました。ここから、「魔王」エルザの不殺の伝説が始まったのです。
雑に説明するとこんな感じで、ストーリーは良くも悪くもエルザの「誰も殺さない」キャラ設定に合わせて進行していきます。これを本来の世界設定に比して、「ヌルい」とか「お花畑」とか言うのは簡単ではありますが、2話以降で相反する概念をPC達にぶつけながらも、上手く行けばエルザのキャラ設定でもクリアできるシナリオを作成している やにおGMも流石だと思います。後半のシナリオギミックは初心者向けからはかなり逸脱している感は否めないところではありますが。
また、これは地味に重要だと思うのですが、1巻84pに

GM:……実は尋問されている展開を考えていなかった
(中略)
エルザ:あれ、じゃあ質問しないほうがいい?
GM:いえ、大丈夫ですよ

のように、PLからGMに確認している記述があります。ともすればGMの想定していない所にわざと踏み込みたがるようなPLもいる中、このようにシナリオの進行を双方で確認をとっていることを明文化しているのはいいことだと思います。無理にアドリブだらけにさせてシナリオが無茶苦茶になってしまっては、いいセッションにはならないでしょうしね。
このように、藤井氏の個性が溢れるリプレイですが、勢いを殺さず上手く表現している作品だと思います。そういえば、今日*5はミリシタで藤井氏演じる所恵美の誕生日(4/15)ですね。ちなみに、自分は恵美Pです(関係ない)。
それでは、よきリプレイライフを。

決戦! 本能寺 ?新撰組、参る? Replay:天下繚乱RPG (integral)

決戦! 本能寺 ?新撰組、参る? Replay:天下繚乱RPG (integral)

決戦! 本能寺 ?新撰組、参る? Replay:天下繚乱RPG (integral)


第17回は、華南恋氏の作品から、「決戦! 本能寺 −新撰組、参る− Replay:天下繚乱RPG」を選びました。
天下繚乱RPGは、スタンダードRPGシステム(SRS)を使用している作品で、江戸後期の化政時代にて勧善懲悪的な時代劇をプレイする作品です。しかし、ただの江戸時代ではなく、「時空破断」という時空の歪みが発生し、過去と現在と未来がごちゃごちゃになった世界であり、時空破断により過去の閻羅王(世界を混乱させる親玉達)が化政時代に集結しています。PC達は、宿星によって妖異(閻羅王の手下)と戦うことを宿命づけられた「英傑」となり、妖異や閻羅王が引き起こす事件に対処していくのが基本となります。
公式において閻羅王は、菅原道真、白面の君、由井正雪天草四郎時貞織田信長の5名の人物が挙げられています。この作品は、高レベルPCを扱ったリプレイです。タイトルからも想像つくように、化政ではなく戦国時代が舞台ということで、閻羅王の織田信長が登場しています。
著者の華南氏は、主にゲームライターとして活躍されているようですが、商業出版の書籍では、これが初の作品のようです。TRPG関係だと、カオスフレアの「暁の戦士たち」にもPLとして参加しています。小太刀右京氏の「後輩」と書かれていますが、何の後輩かは分かりません。
PLには、戦国時代に召喚された新選組隊士 新井志ノ助をイラストレーターの渋沢佳奈氏、第二の主人公である明智光秀イラストレーターの すがのたすく氏、秀吉に仕える忍の夜宵(三十路女性)を合鴨ひろゆき氏、イエズス会の幼女シスター シンシアを しのとうこ氏が演じており、さながらイラストレーターセッションの様相を呈しています。巻末に各氏が描いたPCの設定資料が掲載されてはおりますが、イラストは しのとうこ氏だけですね。PL4名の顔ぶれを見て気づかれた方もいるでしょうが、GMも含め全員が女性で構成されています。
女性だけのリプレイは他には記憶がなく、事実上明示されているのは今の所これだけかもしれません。ソード・ワールド2.0の「魔法少女フェアリーフォース」もなんとなく女性だけっぽいですが、確認してみるとPLが全員女性だという明言はありませんでした(多分)。
ストーリーは、志ノ助の召喚のキーとなったNPCヒロイン雫と志ノ助との心の交流と、タイトルの「決戦! 本能寺」に向けて、閻羅王と化していく信長に対峙する光秀の決意を描いていきます。このリプレイは、PL全員のロールプレイが非常に光っている作品です。
渋沢氏はカオスフレアのリプレイでも主人公を演じていますが、志ノ助は分かりやすいキャラ設定ながらも、そこからブレることもなく最後まで自分の意志を通していきます。光秀はときおり中のオチャメな中の人すがの氏が顔を出したりはしますが、信長との関係に悩みながらも決断していく、明智光秀の生き様を魅せてくれます。夜宵は設定年齢相応(?)の包容力、シンシアも幼女ロールプレイが光っています。(何じゃそりゃ)
シナリオは、明智光秀が天下繚乱RPGの根本設定に深く関わっている天海僧正だったり、ラスボスが公式にも明示されている閻羅王織田信長だったりということもあって、若干吟遊気味な部分はありますが、リプレイとしては全然許容範囲だと思います。
そういえば、2020年度の大河ドラマ明智光秀が選ばれたみたいですね(白々しい)。これを期に、明智光秀天海僧正)が重要な立ち位置となっている天下繚乱RPGのリプレイに触れてみるのはいかがでしょうか。
それでは、よきリプレイライフを。

クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえあんてぃーく るるいえシリーズ(コミック) (ログインテーブルトークRPGシリーズ)


第18回は、結ゆい氏の作品から、「クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえあんてぃーく」(るるいえシリーズ)を選びました。
タイトルと画像に違和感を覚えた方もいらっしゃるかもしれませんが、這い寄るイラストレータ弧印氏を起用した、内山靖二郎氏作のリプレイ「るるいえあんてぃーく」(るるいえシリーズ)のコミカライズ版になります。キャラクターはもちろんリプレイ版と共通です。

樋口さやか(17)

女子高生探偵(見習い)。好奇心旺盛な性格で空手キックが得意。なお、コミカライズでは省略されていますが、空手キックの威力は半端なく、スイカをかち割ったり一般人を蹴り殺しかけたりしています。

辰巳源吾郎(65)

裏の主人公。御津門大学所属の高名な心理学教授。その立場やコネと幅広い知識技能で他のメンバーをサポート。

安針塚京(20)

辰巳に心酔する押しかけメイド。実はいいとこのお嬢さんだが、そのせいか正気度の初期値が低く、1巻後半で……

佐々原環(20)

大学生にして小説家でしかもイケメンという許されざる設定(オイ)。教授に運転技能がないため、車の運転をする場面が多い。

日野睦(16)

2巻から登場。通称むったん。さやかの同級生で正拳突きが得意だが、機械修理技能で役に立つ場面も多い。京と中の人が同じ。

余談ですが、同じクトゥルフ関係の「這いよれ!ニャル子さん」のアニメで、モブキャラとして さやかと睦が登場したり*6、オープニングに登場するキャラシーに京のものが使われたりもしています*7
閑話休題。るるいえシリーズはリプレイ版では3話構成が基本となっていますが、コミカライズでは、この1話を約20〜30頁ずつの前後編で描いています。そのため、描写の都合上カットされた部分もありますが、基本的にはリプレイと同じ展開がされています。自分は、リプレイ2巻の発売当時、ブコメに「表紙に騙されちゃダメ」と書いていますが*8、コミカライズ版はさやか達がメインではあるものの、ホラー要素が十二分に出ているため、ホラー要素で表紙に騙されるということはあまりないかもしれません。
ただ、これはリプレイ版でも文章で描写はされていたのですが、単発挿絵だけではなく漫画で書かれると、グロ要素のインパクトが非常に大きいです(もちろん個人差はあるでしょうけど)。ですので、グロ要素が苦手な人はよく考えてお手に取られたほうがいいかもしれません。
リプレイ版は完結したようですが、るるいえシリーズはアニメ化できるポテンシャルを持っていると思っているので、コミカライズ版も含め今後の展開に期待したいです。
それでは、よきリプレイライフを。

*1:一応、訓練でも士気はある程度までは上がります。

*2:IIIでは同盟を結んでなくても援軍を送れる

*3:tweet投稿日4/1

*4:こちらでもちょこっと紹介していますが、ご容赦ください……

*5:tweet投稿日4/15

*6:http://cthulhu.hatenablog.jp/entry/20120425/p1 参照

*7:http://hikidashinonakami.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-d675.html 参照

*8:http://b.hatena.ne.jp/entry/27031418/comment/shijuushi

44の週刊リプレイ本紹介 3月分

twitterのやつをまとめました。
今月はなんとリプレイ関係者の方から返信も頂いてしまいました。開始したときから来るかもとは思っていたんですが、実際に来ると想像以上に嬉しいものですね。返信を頂いたお二方、本当にありがとうございました。

アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ 死んで花実が咲くものか! (富士見ドラゴン・ブック)


第10回は、田中信二氏の作品から「アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ」シリーズを選びました。(7,8巻は藤井忍氏との共著)(田中信二氏は、「かわたな」という愛称でおなじみですが、これは「かわいそうな田中」の略となります)
デスマーチ」と不穏な名がついていますが、これにはもちろん理由があります。
アリアンロッド・サガ無印シリーズにおいて、菊池たけし氏オハコの読者投稿企画を実施予定だったのですが、無印3巻のシナリオ展開のせいで読者投稿NPCの登場が難しい事態になってしまいました。もちろん、読者投稿企画をなかった事にするわけにはいかず、ついでにサガ無印で描けなかった(無印主人公の)ピアニィ達の後始末をフォローすることまで織り込むために、急遽立ち上げられたのがこの「デスマーチ」シリーズになります。
主人公は、無印に登場するPCアルの義妹という設定のアキナを声優の酒井香奈子氏(現:さかいかな 現在は舞台俳優をメインに活動)が演じています。このシリーズはアキナの成長譚と言っても過言ではなく、ステータスの成長はもちろんのこと、精神面の成長も描かれています。
他のPLは、たのあきら氏と鈴吹社長ときくたけ氏。重鎮ばかりなのは、「デスマーチ」になってしまった尻拭いなんでしょうか。たの氏のPCマルセルは当初設定はスゴイ嫌な奴だったのですが、後半はほぼツンデレの萌えキャラと化すなど、うまくキャラをコントロールしています。社長ときくたけ氏のPCは引っ掻き回しているいつものシーンも目につきますが(カッコいいシーンももちろんあります)、そこをGMであるかわたな氏が同時展開していたシリーズのGMである両氏に大して逆無茶振りするなど、ある意味バランスは取れている構成です。
このリプレイは今までのリプレイにあまり取り込んでいなかった要素を多く取り込んだシリーズになります。そのうちの1つは、各巻最初の1話開始直後に2〜4pのショートコミックが全巻に渡ってついています(サガ・無印シリーズも3巻まではついていました)。最初の巻だけとかシリーズ終了のクライマックスなど個別に行われたことはありますが、これは視覚的な効果は非常に大きく、話の導入としては非常にとっつきやすくなっていると思います。
もう1つの珍しい要素を挙げると、非常に多くのミニイラストがページに差し込まれています。これは前回に紹介したような新紀元社の新書形式のリプレイではよく使われているのですが、新書版の方は元々下部に空きスペースが用意されているのに対し、こちらは版の中にイラストが組み込まれており、この形式はリプレイではおそらく初めてかと思います。こういう表現を行ったのは、もちろん読者投稿NPCを少ないスペースで数多く掲載したいという点もあったのでしょうが、紹介だけでなくそのシーンに合わせたキャラの表情も挟み込まれていたりするので、今見るとまるでLINEなどのスタンプのように端的にそのシーンの状況を捉えやすくしています。
非常に多くのシリーズが展開された「アリアンロッド・サガ」ですので、シリーズ単体だとわかりづらい点もあるかもしれませんが、その分を割り引いたとしても、個人的一押しはこの「デスマーチ」シリーズです。
それでは、よきリプレイライフを。


アキナ役のさかいかなさんからご紹介いただきました。

シノビガミ 平安リプレイ うたものがたり (Role&Roll Books)

シノビガミ 平安リプレイ うたものがたり (Role&Roll Books)

シノビガミ 平安リプレイ うたものがたり (Role&Roll Books)


第11回は、長尾姿子氏の作品から「シノビガミ 平安リプレイ うたものがたり」を選びました。
長尾姿子氏は冒険企画局所属の音楽家という肩書をお持ちですが、ご存知ない方も多いのではないでしょうか。でも、リプレイ好きの方なら、迷宮キングダムリプレイ「黙示録の乙女」の主人公"リジィ"、「シノビガミ悪」リプレイで強烈な大悪女"計図"を演じた"シナコ"さんのことなら聞き覚えがあるかと思います。このリプレイは、そのシナコ氏がはじめて手がけたリプレイで、まるでシノビガミ悪での印象を払拭するかのように、複数の男性の間で移ろう女心を主題とした乙女ゲー的展開で始まります。
主人公にTRPG未経験の方を据えたこともあり、スタートブック上巻のデータだけでPCを作成しています。初心者導入で上級ルールやサプリメントを利用しないリプレイは今までもありましたが、分冊の一部しか使用しないのは珍しい展開です。
シノビガミは他のPC個人には自分から明かせない「秘密」を持ち、時には他のPCを排除してその使命を達成するTRPGです。通常は現代日本を舞台としますが、これは平安時代の日本を舞台とし、タイトルに「うたものがたり」とあるようにストーリーには和歌が大きく関わります。
冒頭にシナコ氏は「ほのぼのホームドラマ」を狙うと宣言しています。序盤こそイケメンPC達がPLの考える色々なイケメン感で主人公に迫ったりはするのですが、シーンが進むに連れ徐々にタイミング悪く陰惨な設定が明かされていき、「ほのぼの」とはいったい…… と思わせる内容となっています。確かに、乙女ゲー風とはいえせっかくのシノビガミなのですから、イケメン枠のPC達が「単に主人公をものにする」だけの「秘密」ではもちろんつまらない訳です。タイミングも良かった(悪かった)とはいえ、このように上手く「秘密」を仕込むのはとてもシノビガミGMをほとんど経験していないとは思えません。他にも、主人公の秘密に毎サイクル「意中の相手」を記入させたり、和歌の上の句という設定で実際に17文字書かせたりというような、個性溢れるマスタリングも出てきて、全体として非常に面白い作品になっています。
シナコ氏は、(冒企作品を除き)一番好きなTRPGは「PARANOIA」、一番好きなボードゲームは「ディプロマシー」と答えており、これだけでかなりのゲーマーっぷりが伺え、それがうまくシナリオにも生きたのかもしれません。
また、冒険企画局のサイコロ・フィクション新書には恒例の、巻末に謎ランダム表が付いているのですが、これにはなんと「歌表」がついており、サイコロを振るだけで31文字の短歌ができるスゴイ表になってます。まあ例によってかなりの確率でカオスになるんですが。
それでは、よきリプレイライフを。


著者の長尾姿子さんからご紹介いただきました。

血の妖石(いし)は宿命(さだめ)の道標(しるべ)―Replay:ゲヘナ‐アナスタシス (integral)


第12回は、友野詳氏の作品から「血の妖石(いし)は宿命(さだめ)の道標(しるべ)―Replay:ゲヘナ‐アナスタシス 」、通称<運命>シリーズ(?)を選びました。
ゲヘナは、「アラビアン・ダーク・ファンタジー」と銘打っており、一般的なTRPG世界観である西洋風ファンタジー世界とは趣の異なる、アラビアンナイト的世界を舞台としています。PCは、超人的な力を振るう享受者となり、主に紫杯連(享受者のギルドのようなもの)の依頼を受け、魔物を退治したり人を唆し陥れる邪霊(シャイターン)の企みを阻止するなどして日々の糧を得、最終的にはゲヘナ(煉獄)に落とされたこの大地(ジャハンナム)から、地上に到達するのを目的としています。って、これだけではなんのこっちゃという感じですよね。
もちろん自分の筆力が足らないのもありますが、一般的なTRPG世界観からはかなりかけ離れており、説明をしてもしても終わらないので、詳細は次のURLでも見てください。(雑)<http://www.jive-ltd.co.jp/gehenna/world/index.html
また、ゲヘナは、ダメージロールと命中ロールが統合されていたり「闘技チット」と呼ばれる必殺技のためのリソースがあったりなどと、ルールも特徴的なのですが、やはり説明終わらないので詳細は省きます。
さて、リプレイの説明に戻って、このリプレイは「ゲヘナ」の版上げ「ゲヘナ〜アナスタシス〜」の高レベルリプレイになります。
PCは4名ですが、初心者対応も合わせて、ルール上は技能扱いの妖霊(ジン)をサブマスが兼務でプレイすることで、プレイヤーは実質4.5人となっています。この立ち位置の設定だけでピンとくる方もいるかも知れませんが、このサブマス兼務の妖霊が大きくシナリオに関わってきます。
PC達も個性的なメンツが揃っています。表主人公は高レベル妖霊にまとわりつかれた設定のイルク、裏主人公は暗い過去を抱えトラップ魔術で四肢を弾けさせるツンクールのシシ、グレイブとトマホークの両刀使いノーテンキ娘フィールー、恋人とも死に別れた生体鋏使い「死神」ガラーム、そして、イルクに「結婚して」とまとわりつく強力な妖霊のターブ。
そのターブに埋め込まれた赤い妖石、そして各PCが持っている妖石が、PC達を運命の渦に巻き込み翻弄していくストーリーなのですが、これを4巻できれいに纏めているのはさすがは実績と経験豊富な友野氏というところでしょうか。
ルールの運用でも面白い点があり、シシの説明で「トラップ魔術」と書きましたが、シシがメインとする術技(技能)「黒沙術」には、相手の行動に対応して自動発動するが事前準備していないといけない、という術技が複数あるのですが、これを普通に行動宣言して準備するとGMにその「トラップ」の内容がバレてしまい、GMは敵の動きに影響与えるのが不可避で、PCも敵(GM)をトラップにかける達成感が薄れるという微妙な点があるのですが、これを回避するためにシシのPLは、白紙カードに事前に書き込み裏返して使用するという方法をとっています。
もちろん、GMとPL間に信頼関係がないと成立しない運用なのですが、これが正式ルールでもいいのではないかと思えてしまうくらいでした。
また、上位邪霊や首領級邪霊の設定はリプレイ本の中にも書かれているのですが、どれも人間の理解の外にあるようなぶっ飛んだ設定になっており、どうやったらこんな「イカレた」設定を思いつけるのか、と感心してしまうほどです。
また、そんな邪霊達を演じる友野GMの楽しそうな様子も本文から伝わってくる感じで、さすがはルナルで「多足のもの」などを登場させたGMらしいなあと思ってしまいます。
過去記事では、友野氏の作品の一つをワースト4に挙げましたが、この作品は非常に面白く多くの人にオススメできます。また、ゲヘナのリプレイはいい作品が多いので、多くの人の目にとまってくれると嬉しいです。
それでは、よきリプレイライフを。

異界戦記カオスフレア リプレイ リオフレード魔法学院 [Role&Roll Books] (Role & Roll Books)


第13回は、小太刀右京氏と三輪清宗氏の共著の作品から、「異界戦記カオスフレア リプレイ リオフレード魔法学院」を選びました。
クレジットは共著になっておりますが、三輪氏は主に追加データの方を担当しているということで、リプレイ部分のメインライターは小太刀氏になっています。小太刀氏は、マクロスBORUTOなどのアニメの脚本やノベライズでの仕事が最近多いみたいですが、このリプレイに使用されているTRPG異界戦記カオスフレア」が商業デビュー作品と、元々TRPG畑の出身ですね。
異界戦記カオスフレア」は、トランプとダイスを併用するTRPGで、トランプのスートに合わせ、大まかなキャラの役割(コロナ)を4種類に分類しています。カオスフレアのシステム上の特筆する部分は、判定に使用するトランプをロールプレイに合わせてGMまたは別PLから譲渡してもらえるという部分で、これによりシステム面からロールプレイを活性化させるシステムとなっているところです。
また、詳細は省きますが(またかーい)、いろいろな異世界を内包した世界観であることより、非常に多彩なバリエーションのキャラを作成する事ができ、例えば、ドラゴンと宇宙戦艦が殴り合いを行うなどの常識外れなシーンも再現することが出来るシステムになっています。多彩なキャラクターが派手なロールプレイを行うという点で、カオスフレアは非常にリプレイに向いたシステムと言えるのではないでしょうか。
タイトルにもある「リオフレード魔法学院」は、南海の孤島にあるあらゆる世界の学生を受け入れる学校となっており、小太刀氏も例として挙げておりますが、かなり蓬莱学園を彷彿とさせる設定です。この「学院」は、基本ルルブ(第一版)に記載はなく、このリプレイにより設定されたものではありますが、前述したような多彩なバリエーションのキャラを無理矢理一つの話に入れ込むツールとしては、非常に良い設定だと思います。
PLには、加納正顕氏、合鴨ひろゆき氏、三輪氏、鈴吹太郎氏を迎えており、いずれも経験豊富で非常に豪華なメンバーとなっています。加納氏演じるのが、コロナが聖戦士(主人公役)のアヴァタール(雑に言うとジョジョのスタンドっぽい何か)使いの地球人でシスコン 泉祐司、合鴨氏が光翼騎士(盾役)の吸血鬼の風紀委員 ノエミ、三輪氏が星詠み(バフ・回復役)の暁帝国(中華風世界)の小国の王女 ナーミア、鈴吹氏が執行者(デバフ役)で島の化身怪獣リオフレードン…… の巫女で天才幼女先生 カシス(ルール上はリオフレードンが本体扱い)
鈴吹社長のリオフレードンは、またいつもの出落ちキャラかと思われるかもしれませんが、当時はそこまで前例がなく、攻撃を大地からのマグマの奔流で表したり、デバフ効果を大地の鳴動で表したり、という扱いにしたのは感心したものです。
1冊2話ということもあって、シナリオも短くはありますがネタが高密度で詰まっており、クラスメイトに油すましやエントやサイボーグがいるようなカオスな学院の中でドタバタありシリアスありと読み応えのある展開になっています。
格ゲーキャラや魔法少女、侍・ニンジャや変形ロボ、果ては北斗神拳もどきや宇宙戦艦に宿る船霊(女性型)や《光になれ!》までプレイできる異界戦記カオスフレアの世界に一度触れてみるのはどうでしょうか。
それでは、よきリプレイライフを。

44の週刊リプレイ本紹介 2月分

twitterのやつをまとめました。

D&Dリプレイ 若獅子の戦賦 (HJ文庫G)

D&Dリプレイ 若獅子の戦賦 (HJ文庫G)

D&Dリプレイ 若獅子の戦賦 (HJ文庫G)


言わずもがなではありますがD&Dアメリカをはじめとして海外では超メジャーなんですけど、日本ではいろいろな事情が相まって、一時期TRPGの展開及びリプレイの展開にはかなり恵まれない環境にありました。そんな中でD&Dが2000年に3rd Editionに版上げ、日本語版が2002年にホビージャパン社より発売されたことで、日本でのD&D復権が始まりました。このリプレイは、さらにv3.5に版上げされ、日本オリジナルの背景世界「トーチポート」でのリプレイとなります。
トーチポートは背景世界として薄味なこともあってか(個人の感想です)非常にとっつきやすく、シナリオも女性成分多めながらも基本的には王道な展開であり、シナリオ面では安心して読める作品となっています。
PLとして、「中国嫁日記」の井上純一氏(当時:井上純弌)が参加していますが、他のリプレイでは正直目に余るプレイもしている氏ですが、今回のリプレイではウォーフォージド(ロボ種族のようなもの)を演じ非常に重厚なプレイをしています。別のPLとして、田中天氏も参加し「女エルフの次世代スタンダード」と称していたりもしています。「次世代スタンダード」かは別としても、長命種族の悲哀を女性エルフで演じているのは、リプレイにおいては比較的珍しいキャラ造形にはなっています。
ルール面においては、自分はAD&D2版(Dark Sun)をかなりの回数、D&D3Edを数回プレイしていたこともあって、ルール自体はそれなりに把握しているためそこまで違和感なく読めたのですが、ルールが複雑なAD&D2版を元にしさらに特技を多く追加された3版は、このリプレイだけでのルール把握は難しいかもしれません。特に、ウィザードがメインクラスではないキャラがビシバシとワンドでダメージを出しているのに対し、プレイヤーが知恵をひねり出しまくって呪文「グリース」を有効活用しようとソーサラー専業キャラが奮闘しているのは、プレイ経験のない人には想像しづらい光景なのかもしれません。
どうでもいい話としては、挿絵も担当している井上純弌氏の絵が非常に扇情的すぎるということでしょうか。これでは外では読みづらいと思う人も多いかもしれません。(モロ表現がないので自分はあまり気にしませんが)
色々書いてしまいましたが、時間跳躍しての高レベル帯でのプレイも載っており、プレイをする上での参考にもなる作品だと思います。
それでは、よきリプレイライフを。

覚悟の扉―ダブルクロス・リプレイ・アライブ (富士見ドラゴン・ブック)


第7回では、矢野俊策氏の作品から、「覚悟の扉―ダブルクロス・リプレイ・アライブ」を選びました。
現代異能モノの小説やマンガなどでは、一般人が能力者に覚醒するという展開は「お約束」と言えるくらいよく描かれていますが、TRPGでもそれを再現しているリプレイになります。これを実際にプレイに取り込んだGMやPLもたくさんいるかとは思いますが、GMは設定作成が意外とめんどくさかったり、PLはあまりに語りが長くなりすぎて他PLに迷惑かけるのもアレなので自己紹介でサラッと紹介するにとどめたり、などと実際のプレイできちんと織り込むには少しハードルが高く思える要素ではあります。
その点リプレイだと最初から書籍化を前提としている場合が多いため、多少他のPLが待たされても納得ずくですし、書籍内ではちょっと導入が長くなるくらいで済むので、リプレイには向いた展開なのかもしれませんね。
主人公である七村紫帆を演じるのは、挿絵も担当している しのとうこ氏。「オリジン」ではPC2の玉野椿を演じていました。椿は堅実でスキがあまりないキャラでしたが、今回の紫帆は主人公ということもあり、色々な弱い点も多くロールプレイされています。紫帆はどこか空虚な点を感じさせるキャラでもあったのですが、設定とGM矢野俊策氏のシナリオを上手く絡め合わせ、3巻ラストで一気に昇華した感じですね。
また、アライブは魅力的な新NPCが多く出たリプレイでもあります。その中での一番はやはりテレーズ・ブルムでしょう。
4歳にてUGN中枢評議員の天才金髪幼女、と属性てんこ盛りではありますが、UGNのトップの一人として冷徹な指示・判断を下しながらも、荒ぶる"かわたな"氏演じる千城寺薫に翻弄される実においしいキャラになりました。そのおかげか3巻では表紙になり、3rdでも公式NPCに採用と大出世。他にも、アキューズはもちろんのこと三郎、槙絵、拓真&知冬、メガナタリアなど、個性溢れるNPCには事欠きません。ただ、彼等のほとんどはもう……
このリプレイのもう一つの見どころは、GM矢野俊策氏が戦闘面で容赦ないことですね。
1話 2/3、2話 3(1)/3、3話 4/4、4話 4/4、5話 3(3)/4、6話 4(2)/4、7話 4(2)/4、8話 4(3)/4
これが何の数字かというと、バックトラックで2倍振り以上のPLの比で()内は3倍振りの数字ですが、これはさすがに多すぎでかなりのやり過ぎと言ってもいいでしょう。その分、戦闘シーンはかなりハラハラさせるシーンに仕上がっており、読み応えのある部分になっています。
それでは、よきリプレイライフを。

迷探偵登場!デュダRPGリプレイ集〈1〉 (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)


第8回は、安田均氏と高井信氏の共著の作品から「デュダRPGリプレイ集1 迷探偵登場!」を選びました。
タイトルに「デュダRPG」とありますが、「デュダRPG」という名のTRPGは存在せず、旧版のソード・ワールドRPGに簡単な2つの判定を追加した、ヴァリアントルールによるリプレイ作品となります。
そもそも「デュダ」とは何なのか?
ソード・ワールド短編集「ナイトウィンドの影」に収録された、高井信氏が著した「鏡よ、鏡!」という短編小説作品が初出で、長編小説6冊、短編小説3本、そしてここで紹介するデュダRPGリプレイが展開されました。
鈍重にして頑迷、そしてわがままなドワーフのデュダが、助手のエルフのリュークとともに迷推理(誤字に非ず)で難事件を解決したり、難事件が勝手に解決したりするお話ですね。リプレイには、小説の設定を元にデュダとリュークがPCとして登場しています。まあ最終的には、他のPCも全員、逆輸入される形で小説にも登場してはいるのですが。推理よりもユーモアを重視していることもあり、技術レベルなど他のアレクラスト作品と異なるところも結構ありますが、リプレイ1巻のあとがきで清松みゆき氏がカレーとシチューに例えて説明・許容しています。
リプレイでは、高井信氏と安田均氏が交代しながらGMとデュダを演じています。こういう形式のリプレイは意外と珍しく、パッと思いつくのは複数人でGMを持ち回りしたサタスペの「アジアンパンクGO!GO!」とPCの一人が立場的に「上がり」になってしまったのでGMと交代したメガテン短編の「ナイトテイル旅情編」(湯けむり女神とアバドン王に収録)くらいでしょうか。
サタスペ リプレイ アジアンパンクGO!GO! (Role&Roll Books) (Role & Roll Books) 湯けむり女神とアバドン王 Replay:真・女神転生TRPG 魔都東京200X (integral)
他にも珍しい要素としては、シナリオ導入時にGMがいなくても勝手に話が進んでいく様を描写しています。もちろん、小説である程度キャラが固まっているのでこういうプレイをやりやすいという下地はありますが、第2回で採り上げた「闇に降る雪 ―Queen of Blue―」でも田中天氏絡みで似たような描写があり、それよりも8年も前の作品であることから、もしかするとこのような描写の草分けなのかもしれません。
リプレイとしては、今の価値観からするとNPCに対して若干やり過ぎな点もあったり、(設定上仕方ないのですが)デュダがものすごく傍若無人だったり、デュダ作品に全く触れてない人には分かりづらかったりもしますが、非常にユーモア溢れる作品となっています。
前々から言っていますが、デュダと愉快な仲間たちを上手くアレンジしてリメイクすれば、非常に面白い萌え4コマになりそうな気がしてますので、SNEさんどうかよろしくお願いします。(投げっぱなし)
それでは、よきリプレイライフを。

ガンドッグ・リプレイ マリオネット・ネメシス (Role&Roll Books)

ガンドッグ・リプレイ マリオネット・ネメシス (Role&Roll Books)

ガンドッグ・リプレイ マリオネット・ネメシス (Role&Roll Books)


第9回は、狩岡源氏の作品から「ガンドッグ・リプレイ マリオネット・ネメシス」を選びました。
ガンドッグ」はガンアクションをメインとしたTRPGで、PCは国際的再保険会社『ワイズ』の私兵『ガンドッグ』(2版の「ガンドッグゼロ」以降は民間軍事会社所属の者をさす)となり、ワイズの依頼を受け様々な任務を遂行していく立場となります。
世界設定としては、2016年の近未来ということですが、すでに追い越してしまってますねw 国家の力関係などは現在とは大きく変わらないのですが、「ナイトメア・ストーム」という地球レベルの異常気象が猛威を奮ったことにより、全世界で治安が悪化しているという設定になっています。
PCのうち主人公格は、ロシア軍で経験を積んだユーリー・A・コズロフ、47歳。41歳から能力値減少が始まるガンドッグではかなり厳しい設定ですが、その分重厚なプレイで魅せています。もう一人の主人公格はオリガ・A・シチェルバコワ。12歳の時に父がMIAとなり翌年母も亡くなったため、父の親友コズロフが後見人となった設定。他のPCは、死に場所を求めるジャック・ボーマン、暗殺者組織出身のタクミの2人です。
このリプレイは、ワイズ・ロシアに所属するPC達が任務の裏に仕掛けられた陰謀を暴いていく内容なのですが、そのストーリーがかなり秀逸な出来となっています。
鋭い方はこれだけでも気付いているかもしれませんが、KIAではなくMIAとわざわざ設定されているということは、オリガの父でありコズロフの親友であるアレクサンドル(サーシャ)・シチェルバコフとPC達は悲しい再会をすることになります。すっかり変貌してしまったサーシャに対し、コズロフとオリガがどう対峙しどのような決断を下すのかというのがメインストーリーで、その中でジャックの過去の任務中に人質となって殺されてしまった恋人シャーロット の妹セシリアとジャックのロマンスや、タクミと一緒に暗殺者組織から逃げ出したはずのディーナとの再会が描かれます。詳細はもちろん中身を読んでもらうのですが、このあたりのストーリー展開が本当に綺麗にできており、ほとんどハードボイルド小説を読んでいるような気分にさせられる作品です。
リプレイとしてみると、ルールブックを持っていないと判定部分が分かりづらかったり、初期の作品のせいか新書版の良さである下段のコラム枠が上手く活かせてなかったり、魅力1のタクミがイケメンなイラストだったり(最後は言いがかり)するのですが、全体として非常に面白い作品ではあると思います。
それでは、よきリプレイライフを。

44の週刊リプレイ本紹介 1月分

twitterで連載(?)してた分を月ごとにまとめて再掲します。加筆修正はするかもですが、めんどくさいので最低限になると思います。
よく考えると週刊じゃなくて「週間」な気もしますが、今更変えるとハッシュタグがね……

ソード・ワールドRPGリプレイ集〈1〉盗賊たちの狂詩曲(ラプソディ) (富士見文庫―富士見ドラゴンブック)


1回目は言わずと知れたレジェンド、スチャラカ冒険隊シリーズを選びました。TRPGリプレイのあり方だけではなく、TRPGの遊び方にまで大きな影響を与えた作品ですね。
物語の定型である世界の危機や強敵に立ち向かう話でもなく、ゲームとしてあくまで効率を優先して遊ぶ話でもなく、フォーセリアという世界の中で冒険者のちょっと背伸びしたくらいの日常と、それを楽しそうに遊ぶプレイヤーたちを描いたことで、「TRPGはこんなに楽しいんだぞ!」ということをTRPGに初めて触れた人にも伝えられる教科書的な作品だと思います。
さすがに今読むと古臭い感は否めませんが(初版平成元年12月)、このリプレイに影響を受けたという話を他のリプレイでも何度か目にしたように、今に繋がるTRPGリプレイ文化の源流であると言っても過言ではないかと思います。
ただ、このリプレイの影響で、ファリス神の地位(人気)が大暴落し、以降へっぽこのイリーナが現れるまでほぼ復権しなかったという点もあります。日本では、「悪・即・斬」的思想は馴染みづらかったと言う環境もあったのかもしれませんが、2巻で頭の固いファリス神官を描いてしまったことで、ファリス神官全員が頭が固く融通が効かず悪・即・斬というイメージが付いてしまい、ファリス神官自体が敬遠されてしまったような印象もあります(もちろん、違うファリス神を演出していた卓も多数あったかと思います)。今見ると、そういう神官もいるよね〜ですまされそうな事案ですが、下手にバイブル的なものになってしまった弊害の一つではあるんだと思います。
言いがかりみたいなことも書いてしまいましたが、当時の環境も含めて思いを馳せると、楽しい作品だと思います。

ダブルクロス・リプレイ 闇に降る雪―Queen of Blue (富士見DRAGON BOOK)


第2回では、F.E.A.R菊池たけし氏の作品から、「ダブルクロス・リプレイ 闇に降る雪 ―Queen of Blue―」を選びました。
富士見ドラゴンブックでは菊池氏最初の作品になるんですかね。全体ストーリーを無闇に壮大にし、TRPGのノリによる雑談などからも積極的に次の展開を採用する菊池氏ではありますが、この作品ではそれらの要素は若干抑えめになっていますね。まあそうは言っても、ラスボスは「世界の支配者」なので全世界を巻き込むストーリーにはなっていたり、繰り返される(笑)・(一同大爆笑)・強調太字もあったりと、いわゆる「きくたけ節」はこの頃にはほぼ確立されているっぽく見えます。
でも、ストーリー自体はダブルクロスとしては比較的王道な展開にはなっており、リプレイ読み初心者にもオススメし易い作品にはなっております。
そう、一部の注意点を除いては
このリプレイは、田中天氏が(おそらく)初めてリプレイにプレイヤーとして参加した作品です。「天プレイ」という造語が生まれたように、ハイテンション&暴走気味のプレイが特色ですね。このリプレイの一番特筆すべき点は、この田中天氏のプレイの様子(とそれにツッコむ矢野俊作氏)を面白おかしく書いた点にあります。このやりとり自体は面白いのですが、一般コンベンションでこの田中天氏のプレイの様子を表面だけ真似た、ただ暴走するだけの「劣化天」が現れたなんて話も聞いたりと、実際にセッションでそのままマネされると困ってしまうというのが難点ではあります。(本文にも注釈あり)
この頃は自分もTRPGをプレイしていて、ここまでではないけど似たようなプレイを実際にしている人(もちろん迷惑ではないレベルで)を見ていたので、書いてある内容にはそこまで違和感を持ちませんでしたが、こんなプレイの様子がそのまま書いてあることには驚きを感じました。
こちらでも紹介したとおり、きくたけ作品の個人的1位に挙げている作品でもあります。
それでは、よきリプレイライフを。

聖華学園退魔生徒会―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X (ジャイブTRPGシリーズ)

聖華学園退魔生徒会―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X (ジャイブTRPGシリーズ)

聖華学園退魔生徒会―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X (ジャイブTRPGシリーズ)


第3回では、朱鷺田祐介氏の作品から、「聖華学園退魔生徒会―Replay:真・女神転生TRPG魔都東京200X」を選びました。
メガテンのリプレイは、あの複雑な悪魔合体の例示や運用例などを入れてしまうせいなのかどうしても戦闘がガチになり、それに引っ張られてシナリオもシリアス風味のものが続いていたのですが、こちらのリプレイはお気楽・ゆるゆるに展開していきます。
どのくらいゆるいかというと、1話では人間PCだったキャラクターがプレイヤーの希望により2話で悪魔PCになっているくらいのゆるゆる加減です。まあでも、この程度は親しい間柄のセッションであれば、普通にある風景かもですね。そのゆるさに拍車をかけているのは、プレイヤーの一人が著者でありGMである朱鷺田氏の「娘。」さんであるせいもあるかもしれません。あとがきにはこの娘さんがテープ起こしなどを手伝っているとあり、朱鷺田氏の「家内制手工業リプレイ」という表現がしっくりきます。
その雰囲気が良かったのかキャンペーンは長く続き、最終的には9巻(+外伝短編1話)までと、JIVEのTRPGリプレイでは(おそらく)最長の作品となっています。また、1巻では中学生だった「娘。」さんも最終巻では大学生になられており、時の流れを感じました。
一時期、リプレイは「プレイのお手本」的なものに囚われているように見えた某社や、セッションの勢いだけを重視しているような描写に見えた別の某社のリプレイが続いていた中、「聖華学園退魔生徒会」はある意味前々回に紹介した「スチャラカ冒険隊」に近い雰囲気に原点回帰した印象は受けました。まあ、出版された頃は上で述べた他社の傾向もだいぶ解消されてはいたんですけどね。
このリプレイには当時発売の新作メガテンにインスパイアされたストーリーが織り込まれており、プレイ済みの人はニヤリとできる場面が多くありそうなのも特色なのかもしれません。でも、自分はメガテン関係作品を一つもプレイしていないのでよく分からないのですが……
ガチ戦闘で唸らせるリプレイも、ゆるゆるとプレイの楽しそうな様子を描写するリプレイもそれぞれ違った魅力があると思いますね。
それでは、よきリプレイライフを。

艦隊これくしょん‐艦これ‐艦これRPGぼっちリプレイ 空はあんなに青いのに (富士見ドラゴンブック)


第4回では、河嶋陶一朗氏の作品から、「艦隊これくしょん −艦これ− 艦これRPGぼっちリプレイ 空はあんなに青いのに」を選びました。
最近導入されることも増えてきた一人プレイモードを採り上げたリプレイで、元はwebで連載されてた気がします。GM(この作品では提督)に「天空物語」の幸宮チノ氏、ルールアドバイザーに河嶋氏が入り、チノ氏の一人プレイ(机上演習)の様子を起こした作品になります。
艦これRPGはベースがサイコロフィクションなこともあって、サイコロの出目で勝手に面白くなっていくという要素があり、また、艦これという元ネタがあることにより、こじつけ・妄想が展開しやすくなるという相乗効果もあって、それらがうまく表現されています。また、チノ氏のネタ体質やヒドイ出目の悪さもあり、それらもいい所でアクセントとなって効いていますね。16pで河嶋氏が「机上演習は妄想しながら遊んだ方が絶対楽しい」と述べているのは、まさしく至言だなと思います。
ただこの作品は、リプレイとしてはかなり異質な部類に入ります。
艦これのキャラ(艦娘)の性格を理解していないと話が頭に入りにくいのもそうですが、本文の半分以上が艦娘のやりとりで構成されており、一見ただの二次創作作品に見えてしまうこと、及びその艦娘のやりとりを実際にどこまでやってたのかは当然分からないことにより、そもそも「TRPGリプレイ」のカテゴリに入れるべきではない、という人もいるかもしれません。まあ、私はあまり細かいことは気にしないのですが。
一人プレイということで、どうしても虚しい・寂しいイメージがある中、このように一人プレイを面白おかしく書いてあるリプレイにも意義があると思います。
それでは、よきリプレイライフを。

ソード・ワールドRPGリプレイ集xS 文庫 1-4巻セット (富士見ドラゴンブック)


第5回では、清松みゆき氏の作品から、「ソード・ワールドRPGリプレイ集xS1 猫の手冒険隊、集結!」を選びました。
第1回に「盗賊たちの狂詩曲」をとりあげましたが、そちらがフォーセリアを舞台とするソード・ワールドRPGリプレイ1作目なのに対し、こちらはフォーセリア舞台のソード・ワールドRPGリプレイ最終シリーズになりますね。最終シリーズなので、リウイのように世界の危機に立ち向かう…… という訳ではなく、一地域に草の根的に力を広げた悪の秘密結社を倒しに行くというスケールが大きいんだか小さいんだかよく分からない感じのメインシナリオとなります。
このリプレイできっちりしている所、というか清松氏らしい所は、いろいろなプレイヤーのミスややり過ぎに対して制裁を加えている所にありますね。追加敵がいる可能性があるにも関わらず突出したPCを容赦なく捕獲したり、盗賊ギルドで失言したPCには見張りのNPCをつけたり、そのNPCを邪険にしていたら重要参考人と一緒にドロンされたり、やりすぎたプリーストPCを街から追放したり。まあ中には微妙に機能していないものもあったりしますが、こういう例示はGMをする上でも参考になるのではないでしょうか。
あと、SWリプレイで実は初かもという要素ですが、「なんちゃってチャ・ザ」プリーストのPCがいるということですね。旧版ソード・ワールドをプレイした方はお分かりかと思うのですが、チャ・ザは1レベルで使える特殊神聖魔法がとにかく便利なんですよね。だからリプレイで使うのは意図的に避けてきたんでしょうが、今回は最後ということでその点は目をつぶったのかもしれません。
ただ、このPCは普段は他PLから「大首領」と揶揄されるほど比較的黒かったりヒドかったりする発言が多いのですが、チャ・ザプリーストとしては、意外と外れたプレイをしていないというか、むしろプリーストとして動いていたりと「なんちゃって」にも関わらずスキのないロールプレイをしたりしています。(セッシー絡みはまあ仕方のない所はありますが)
また、旧版ソード・ワールドは、命中率を上げる方法が少ないせいで、その命中を上げられるメイス系が有利だと散々言われていたのですが、このシリーズの最終戦闘で太いけど避けない敵を数多く出すことでソード系の有利さを出したのはソード・ワールドの面目躍如という所でしょうか。
このリプレイでは敵の名前は金属名でおよそ統一されてるんですが、R&R連載当初のラスボスの名前はDr.リード(lead)だったのは、ナイショです。(別に内緒という訳でもない)
それでは、よきリプレイライフを。

NPBドラフトのくじ引き勝率

私の応援するファイターズが、7球団が競合した高校屈指のスラッガー清宮選手の交渉権を得たことより、「ファイターズはくじ運がいい」というのをtwitterなどでよく目にしましたので、果たしてそれが本当か、調べてみました。
期間は、高校と大学社会人の分離ドラフトが撤廃され、現在とほぼ同じ仕組みとなった2008年から今年までの10年分で比較し、くじ引きにおける勝率上位からカウントアップ方式で紹介します。隅カッコ【】内は、1巡目のみを考慮した成績です。また、選手名は敬称略とさせて頂きます。

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