インフィールドフライ

昨日は鎌ヶ谷に行っておりまして、鎌ヶ谷ファイターズが11-0から逆転をするというとんでもない試合を観て興奮していたわけなのですが、一軍のカープジャイアンツ戦でサヨナラインフィールドフライという珍しい結末があったみたいなので、そちらを先に簡単に解説したいと思います。
(更新もない零細ブログを誰が見てるんだというご指摘は、聞かなかったことにします。)
念の為手持ちの公認野球規則(2012年版*1)から引用します。

ニ・四〇 INFIELD FLY(インフィールドフライ)
 無死または一死で、走者が一・二塁、一・二・三塁にあるとき、打者が打った飛球(ライナー及びバントを企てて飛球となったものを除く)で、内野手が普通の守備行為をすれば、捕球できるものをいう。(中略)
 審判員は、打球が明らかにインフィールドフライになると判断した場合には、走者が次の行動を容易にとれるように、ただちに“インフィールドフライ”を宣告しなければならない。(中略)
 インフィールドフライが宣告されてもボールインプレイであるから、走者は離塁しても帰塁してもよいが、その飛球が捕らえられれば、リタッチの義務が生じ、これを果たさなかった場合には、普通のフライと同様、アウトにされるおそれがある。
(後略)
 
六・〇五 打者は、次の場合、アウトとなる。
(e)インフィールドフライが宣告された場合

インフィールドフライのルールがどうして定められているかというのを考えると、色々なことが見えてきます。
どうしてこのルールがあるのかというと、故意落球等による併殺の防止です。わざと落球する(or捕球しない)こと*2により、打者走者はともかく、フライを捕球されたらリタッチの義務を負う一塁走者・二塁走者(・三塁走者)を簡単にフォースプレーでアウトにすることができるため、わざわざルールによって規定されているのです。つまり、フォースプレーによる併殺を防止するためのルールである以上、インフィールドフライ宣告後にフォースプレーが発生することはありえないのです。
このプレーの分かりづらい一番の理由としては、宣告された瞬間に打者がアウトになるという点になります。インフィールドフライが発生する前提条件が「無死または一死で、走者が一・二塁、一・二・三塁にあるとき」ですので、通常はこの状況だとフォースプレーになるのですが、宣告された瞬間に打者がアウトになるため、その瞬間に全ての走者の進塁義務がなくなる、つまり、タッチプレーになるということです。
よって、昨日のシチュエーションだと、ジャイアンツの野手がカープの三塁走者にタッチする必要があったということになります。

http://www.hochi.co.jp/giants/20150504-OHT1T50136.html
動画を確認した感じだと、福家主審のジャッジのやり方にもミスがあったように思われます。インフィールドフライのプレーやジャッジのミスはどちらかと言うと浅いフライの時の方が多いのですが、今回は比較的打球が高く上がっており、また福家主審もすぐに上を見上げてキョロキョロすることもなくボールの行方を確認できている(と思われる)ことより、ジャッジ(インフィールドフライ・イフ・フェア)する余裕は十分にあったと思われます。その後のアウトのジェスチャーも意味不明ですし、福家主審は明らかに状況を勘違いしてしまった可能性が濃厚だと思います。*3
「あれは誰が見ても明らかなインフィールドフライです」と、審判が言ってしまうのは問題ではありますが、ちょっとルールを知っていれば、打球が上がった瞬間にインフィールドフライだなと判断するとは思いますし、選手ならなおさらその認識を持つのは当然かもとは思います。
実際に一軍の試合で同様のプレーが発生したのは24年前らしいですが、今まで自分が観戦した試合でも、選手がこの辺りのルールを勘違いしてしまったプレーを確か2,3回くらいは見たことがあります。自分の観戦経験の総数は覚えてないですが、多くてもせいぜい150戦程度だと思いますので、ワンシーズンでも意外と出るプレーとも言えるのかもしれません。もちろん、正規にフライを捕球されたことの方が圧倒的に多いでしょうから、状況だけ見ると滅多にないプレーではないでしょう。
スポーツ報知写真部のG-Photobook:巨人:スポーツ報知: 勉強になりました(5月4日マツダスタジアム、広島戦)
ですので、この記事にある、村田選手のコメント「一生のうちに1回あるかどうかのプレー。」というのは、非常に認識が甘いと思います。確かに、正規捕球されることがほとんどではあるでしょうが、カバーリングに代表されるように正規の状況が出来なかったことへの対処というのは守備の基本的要素ではあります。

*1:少し古いですが、該当項目は変わってないはずです

*2:故意落球にも公認野球規則六・〇五(l)で定められてはいるのですが、このルールはインフィールドフライ宣言時には除外されていることより、インフィールドフライで対応できない場面を補足するものと考えられます。

*3:出展が思い出せませんが、インフィールドフライの場面では誤審が多くなるということで、無死or一死 and 一二塁or満塁になると、“プレー”宣告前に独自の符丁を決めているという記述を見たことがあります